日本薬理学雑誌
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イヌの実験的不整脈に対するNizofenoneの影響
中村 忠男津曲 立身
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1984 年 84 巻 5 号 p. 441-451

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抄録
脳保護作用を有するnizofenoneについて,各種実験的不整脈に対する影響を静脈内投与にて検討し,quinidineの作用と比較した.nizofenoneは,pentobarbital麻酔下のイヌでouabainの持続注入による不整脈ならびに死亡を指標とした心毒性の発現に対し,3および10mg/kgで遅延作用を示すとともに,ouabainの累積投与によって生じた心室性頻拍に対しては,1,3および10mg/kgで正常洞性調律への改善作用を示した,nizofenoneによる効果は,quinidineに比較して若干強力であった.また,冠動脈の左前下行枝を結紮して誘発した心室性不整脈に対しては,3mg/kgで一過性の,10mg/kgでは持続する正常洞性調律への改善作用を示したが,quinidine 10mg/kgの効果に比較して若干弱かった.pentobarbital麻酔下のイヌでは,nizofenoneはquinidineと同様,抗不整脈作用を示す用量で血圧の下降および心拍数の減少作用を有するとともに,心電図上にQTc間隔の延長作用を示した.一方,halothane麻酔下のイヌにepinephrineを持続注入して誘発した不整脈に対しては,nizofenoneの1および10mg/kgでほとんど影響はないが,quinidineは10mg/kgで著明な抑制作用を示した.また,epinephrine注入時の血圧上昇反応に対しては,nizofenoneは拡張期血圧を軽度に増強し,quinidineは収縮期血圧を著明に抑制した.さらに,両化合物はhalothane麻酔下で血圧の下降および心拍数の減少作用,ならびに心電図上にQTc間隔の延長作用を示したが,nizofenoneよりもquinidineにおいて顕著であった,quinidineの本術式における抗不整脈効果はアドレナリンα受容体の遮断作用に由来するものと考えられる.nizofbnoneはアドレナリンα受容体の遮断作用を示さないことから,本化合物の各種実験的不整脈に対する効果は,心臓循環器系に対する諸作用ならびに心筋細胞膜での安定化作用に基づくものと考えられる.
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