FUT-175(nafamstat mesilate)の血液凝固系,血小板および線溶系に対する阻害作用を検討した.1)FUT-175は,ウサギ血漿を用いた活性化部分thromboplastin時間において,3×10
-6Mで対照の約2倍に凝固時間を延長した.この作用はheparinの0.3U/mlに相当した.また,thrombin時間では3×10
-5Mより,prothrombin時間では1×10
-4Mより,それぞれ有意に凝固時間を延長した.2)ヒト血漿を用いた楊合のFUT-175の抗凝固作用は,各測定方法においてウサギ血漿の場合の約1/3の濃度で同等の作用を示した.3)FUT-175はウサギ血小板におけるthrombin凝集に対し3×10
-6Mより,arachidonic acid,ADPおよびcollagen凝集に対しては3×10
-4Mで,それぞれ有意に抑制した.4)ヒト血小板においても,thrombin,epinephrineおよびADP凝集に対して3×10
-6Mより,collagen凝集に対しては1×10
-5Mより,それぞれ有意に抑制した.5)イヌ血小板において,lipopolysaccharideは3~1000μg/mlで用量に依存した凝集を誘発した.FUT-175はlipopolysac-charide 10μg/mlによる凝集を,1×10
-4Mより有意に抑制した.6)fibrin塊退縮試験においてFUT-175は1×10
-4Mより退縮率を有意に抑制した.7)線溶系への作用は,血漿にurokinaseとthrombinを添加して生成したfibrin塊の溶解時間によって検討した.FUT-175は3×10
-8Mより有意に溶解時間を延長した.8)FUT-175の凝固系,血小板および線溶系に対する作用を,ウサギに静脈内投与後ex vivoで検討した結果,in vitroでの作用発現濃度に応じた反応を認めた.9)マウスの尾切断による出血時間に対しても,FUT-175は,1mg/kg,i.v.より延長作用を示し,in vivoにおいても作用を有することを確認した.以上の結果より,FUT-175は血液凝固,血小板および線溶系に対し,強い阻害作用を有する薬物であることが判明した.
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