日本薬理学雑誌
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84 巻, 5 号
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  • サリチル酸の胎仔毒性に対する発熱物質の増強作用
    伊丹 孝文, 加納 晴三郎
    1984 年 84 巻 5 号 p. 411-416
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    前報で著者らは細菌内毒素(LPS)を前投与したラットではAspirin(ASA)の急性毒性および胎仔毒性が著しく増強されることを報告した.その機作を明らかにするため,ASAの主代謝産物であるsalicylic acid(SA)について同様な実験を行い,以下の結果を得た.1)SAのsodium 塩(Na-SA)をラットに腹腔内注射した時,LD50は980mg/kgであったが,100μg/kgのLPS(LD50;4900μ9/kg,i.v.)を2時間前に静注すると340mg/kgとなり,SAの急性毒性の上昇が認められた.2)妊娠15日のラットにLPS(20μg/kg,i.v.)を負荷した後,SA(383mg/kg)を経口投与すると母体重の増加は著しく抑制された.しかし,SA単独投与ではその抑制は少なかった.3)上記の母体を妊娠20日に開腹し胎仔を観察したところ,LPSおよびSAを併用投与した群ではそれぞれの単独投与群に比し胚の吸収あるいは胎仔死亡,胎仔体重の低下および胎仔の骨格の変異が高頻度で認められた.4)SA単独あるいはLPS併用群で認められた上記の毒性(急性毒性,母体毒性,胎仔毒性)はいずれも等モルのASA単独あるいはLPS併用投与で観察されたものと同程度であった.5)SA投与時の血中濃度の半減期はLPS投与により著しく延長された.また,その傾向は等モルのASAを投与した時の血中SA濃度についても認められた.以上の結果よりASAの単独あるいはLPS併用時の毒性に主代謝産物SAが重要な役割を果していることが示唆された.
  • IV.血液凝固系,血小板,線溶系に対する作用
    越山 良子, 尾関 正之, 元吉 明美, 藤田 允信, 岩城 正廣, 青山 卓夫
    1984 年 84 巻 5 号 p. 417-428
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    FUT-175(nafamstat mesilate)の血液凝固系,血小板および線溶系に対する阻害作用を検討した.1)FUT-175は,ウサギ血漿を用いた活性化部分thromboplastin時間において,3×10-6Mで対照の約2倍に凝固時間を延長した.この作用はheparinの0.3U/mlに相当した.また,thrombin時間では3×10-5Mより,prothrombin時間では1×10-4Mより,それぞれ有意に凝固時間を延長した.2)ヒト血漿を用いた楊合のFUT-175の抗凝固作用は,各測定方法においてウサギ血漿の場合の約1/3の濃度で同等の作用を示した.3)FUT-175はウサギ血小板におけるthrombin凝集に対し3×10-6Mより,arachidonic acid,ADPおよびcollagen凝集に対しては3×10-4Mで,それぞれ有意に抑制した.4)ヒト血小板においても,thrombin,epinephrineおよびADP凝集に対して3×10-6Mより,collagen凝集に対しては1×10-5Mより,それぞれ有意に抑制した.5)イヌ血小板において,lipopolysaccharideは3~1000μg/mlで用量に依存した凝集を誘発した.FUT-175はlipopolysac-charide 10μg/mlによる凝集を,1×10-4Mより有意に抑制した.6)fibrin塊退縮試験においてFUT-175は1×10-4Mより退縮率を有意に抑制した.7)線溶系への作用は,血漿にurokinaseとthrombinを添加して生成したfibrin塊の溶解時間によって検討した.FUT-175は3×10-8Mより有意に溶解時間を延長した.8)FUT-175の凝固系,血小板および線溶系に対する作用を,ウサギに静脈内投与後ex vivoで検討した結果,in vitroでの作用発現濃度に応じた反応を認めた.9)マウスの尾切断による出血時間に対しても,FUT-175は,1mg/kg,i.v.より延長作用を示し,in vivoにおいても作用を有することを確認した.以上の結果より,FUT-175は血液凝固,血小板および線溶系に対し,強い阻害作用を有する薬物であることが判明した.
  • 五味田 裕, 市丸 保幸, 森山 峰博
    1984 年 84 巻 5 号 p. 429-439
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    adamahtane誘導体であるamantadineの作用特性を明らかにするために外側視床下部刺激による自己刺激行動(ICSS)に対する作用とともに〔14C〕2-deoxyglucose(〔14C〕2-DG)法で脳局所糖代謝に及ぼす影響をWistar系雄性ラットを使用して検討した.ICSSに対する作用;Skinner box法における脳内低電流通電時の低頻度レパー押し反応に対する作用ならびにrun-way法の走行スピードに対する作用では,前者においてamantadine5および10mg/kg(p.o.)の少量でレバー押し反応の充進が,また50mg/kg(p.o.)以上の用量で逆に抑制が,後者においても5および10mg/kg(p.o.)で走行スピードの上昇が認められた.脳内刺激による葛藤行動に対する作用では,5および10mg/kg(p.o.)の投与で罰期の反応は全く影響されなかったが,安全期の反応の尤進が認められた.糖代謝に及ぼす影響;オートラジオグラフィよりdopamine receptor blockerのpimozide 0.75mg/kg(i.p.)の投与で間脳部の外側手綱核に高い黒化度すなわち局所脳糖代謝の亢進が認められ,またamantadine 5mg/kg(i.p.)との併用時では,pimozide投与で得られた外側手綱核の高い局所糖代謝の充進は低下した.以上の成績よりamantadineは脳内自己刺激行動の亢進およびpimozide前処置時の外側手綱核の糖代謝亢進を抑制することが示唆された.
  • 中村 忠男, 津曲 立身
    1984 年 84 巻 5 号 p. 441-451
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    脳保護作用を有するnizofenoneについて,各種実験的不整脈に対する影響を静脈内投与にて検討し,quinidineの作用と比較した.nizofenoneは,pentobarbital麻酔下のイヌでouabainの持続注入による不整脈ならびに死亡を指標とした心毒性の発現に対し,3および10mg/kgで遅延作用を示すとともに,ouabainの累積投与によって生じた心室性頻拍に対しては,1,3および10mg/kgで正常洞性調律への改善作用を示した,nizofenoneによる効果は,quinidineに比較して若干強力であった.また,冠動脈の左前下行枝を結紮して誘発した心室性不整脈に対しては,3mg/kgで一過性の,10mg/kgでは持続する正常洞性調律への改善作用を示したが,quinidine 10mg/kgの効果に比較して若干弱かった.pentobarbital麻酔下のイヌでは,nizofenoneはquinidineと同様,抗不整脈作用を示す用量で血圧の下降および心拍数の減少作用を有するとともに,心電図上にQTc間隔の延長作用を示した.一方,halothane麻酔下のイヌにepinephrineを持続注入して誘発した不整脈に対しては,nizofenoneの1および10mg/kgでほとんど影響はないが,quinidineは10mg/kgで著明な抑制作用を示した.また,epinephrine注入時の血圧上昇反応に対しては,nizofenoneは拡張期血圧を軽度に増強し,quinidineは収縮期血圧を著明に抑制した.さらに,両化合物はhalothane麻酔下で血圧の下降および心拍数の減少作用,ならびに心電図上にQTc間隔の延長作用を示したが,nizofenoneよりもquinidineにおいて顕著であった,quinidineの本術式における抗不整脈効果はアドレナリンα受容体の遮断作用に由来するものと考えられる.nizofbnoneはアドレナリンα受容体の遮断作用を示さないことから,本化合物の各種実験的不整脈に対する効果は,心臓循環器系に対する諸作用ならびに心筋細胞膜での安定化作用に基づくものと考えられる.
  • Gentamicinと塩化第二水銀の腎毒性
    小島 良二, 鈴木 良雄
    1984 年 84 巻 5 号 p. 453-462
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体抗生剤の腎障害の検索に有用なパラメーターを見い出すために,gentamicin(GM)を連投し,尿中蛋白量,尿中各種酵素活性および血中尿素窒素量(BUN)などの変動と共に組織学的な変化を追究した.また,HgGl2についても合わせて考察した.すなわち,GM 80mg/kg/dayの15日間投与により,尿中蛋白量および尿中alkaline phosphatase,N-acetyl-β-glucosaminidase,lactate dehydrogenase,γ-glutamyl transpeptidase,lysozyme.活性は,3または5日目以後増加し始め,7または10日目にピークに達した.その後は投与を継続しているにもかかわらず下降を続け,15日目にはほぼ正常値近くに回復した.また,尿中酵素活性の増加の程度は蛋白量よりも顕著であった.さらに,BUNも10日目にピークを示す増加を認めた.腎組織光顕観察では,10日目に腎皮質外側部に著しい尿細管上皮細胞(主に近位部)の変性および壊死が見られ12日目には多くの有糸分裂像が認められた.そして15日目においては尿細管上皮細胞の広範に及ぶ再生像が観察された.また,HgCl2投与でも,GMと同様に尿中蛋白量,尿中各種酵素活性およびBUNの増加が認められた.そして,投与24時間後の腎組織にはすでに腎皮質内側部に尿細管上皮細胞の顕著な壊死像が見られた.以上のごとく,GMによる尿細管障害では,HgCl2と同様尿中蛋白量の測定よりは,尿中の各種酵素活性の測定がその障害を検索するのに有用なパラメーターであると思われる.
  • Gentamicin腎毒性に対するLatamoxefの防御作用
    小島 良二, 鈴木 良雄
    1984 年 84 巻 5 号 p. 463-469
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    腎障害性薬物の併用投与の影響を明らかにする目的で,アミノ配糖体抗生物質,gentamicin(GM)とオキサセフェム系抗生物質,latamoxef(LMOX)との併用投与によるラット腎に対する作用を検討した.体重約230gの雄性SD系ラットを用い,GM 80mg/kg/day単独,およびLMOX00,1000ないし2000mg/kg/dayを同時にラット背部皮下に15日間連投した.投与開始より1,3,5,7,10および15日目に,24時間尿の採取と尾静脈からの採血を行ない,前報のgentamininおよび塩化第二水銀の腎毒性の結果に基づき生化学的パラメーターおよび組織学的観察によりその影響を評価した.尿中蛋白量において,GM単独群では正常群に対し10日目をピークとする増加が示された.この増加に対して,LMOXの併用投与により抑制が認められた.各種尿中酵素活性においても尿中蛋白量と同様,GM単独群では著しい増加が見られたが,LMOX併用群ではほぼ用量依存的な抑制効果が認められた.また同様な効果は血中尿素窒素量にも見られた.加えて,10および15日目における腎組織は,GM単独群では尿細管上皮細胞の壊死ならびに再生像を示したが,LMOX併用群ではほぼ正常に近い組織豫が見られた.以上のことから,LMOXの併用投与は,GMによるラットの腎障害を著明に防御するものと思われる.
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