抄録
gallamine不動化ネコを用い,脳への血流を一定時間遮断した後の錐体路反応,皮質脳波および局所脳血流量に及ぼすnizofenoneの効果を,pentobarbitalと比較検討した.脳底動脈および総頸動脈の分枝(上甲状腺動脈,背側筋枝,内頸動脈,後頭動脈および上行咽頭動脈)を結紮した後,総頸動脈を45分間閉塞することによって脳虚血を負荷した.nizofenone(1mg/kg,i.v.)は再開通後,錐体路反応および皮質脳波の回復を促進した.対照群で認められた回復過程の中断と,その後再び抑制に移行するいわゆる二次抑制は認められず,脳血流量においては,良好な循環状態が持続した。pentobarbital(20mg/kg,i.v.)は再開通後,一過性に錐体路反応の回復を促進したが,その後は対照群と同様に,脳血流量の低下に伴って二次抑制が発現した.これらの結果から,nizofenoneは,虚血によって発現する神経機能の低下ならびに脳血流の減少に対して保護作用を有し,本作用はpentobarbitalとは異なることが判明した.