日本薬理学雑誌
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新抗うつ薬,MO-8282の薬理学的性質(第2報)
溝田 雅洋及川 善博中山 和男水口 清寶田 哲仁小島 正裕兼広 秀生船戸 秀幸栢本 美沙江佐藤 正巳仁保 健
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1986 年 88 巻 6 号 p. 457-466

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抄録

MO-8282の抗うつ薬としての薬理学的特性を検討した.MO-8282はラット大脳皮質膜分画の3H-clonidine特異結合を阻害し,その作用はmianserinより約5倍強力であった.また,モルモット摘出回腸標本のfield stimulationにより生ずる攣縮反応においてもclonidine拮抗作用を示したことから,α2-アドレナリン受容体遮断作用を有することが示唆された.MO-8282はin vivoの実験において,30 mg/kg, i.P.投与においても脳内noradrenaline(NA),dopamine(DA)およびserotonin(5-HT)の取込みを阻害しなかったが,mianserinは脳内5-HTの取込みのみを阻害した.MO-8282は,ラット大脳皮質シナプトゾームからの3H-NAの自然遊離には影響をおよぼさなかったが,線条体シナプトゾームからの3H-DAおよび3H-5-HTの自然遊離を軽度に促進し,これらの作用はmianserinに類似していた.MO-8282 30 mg/kg, i.p./day 15日間投与により,脳内NAの代謝回転の亢進がみられたが,脳内DAおよび5-HTの代謝回転は不変であった.以上の成績は,MO-8282の薬理学的特性が,これまでの三環系抗うつ薬と異なり,mianserinと同様主としてα2-アドレナリン受容体遮断作用を介する中枢NA系への作用を有することを示唆するものと思われた.

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