日本薬理学雑誌
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ローヤルゼリー(Royal Jelly)の抗腫瘍効果に関する研究
田村 豊幸藤井 彰久保山 昇
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1987 年 89 巻 2 号 p. 73-80

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抄録

ローヤルゼリー(RJ)の抗腫瘍効果を,L1210,P388,およびEhrlich,sarcoma-180腹水または固型腫瘍を用いたマウスの腫瘍移植系を用いて検討した.RJの投与は,予防・治療的(腫瘍移植30日前より移植30日後までの60日間,毎日1回)または治療的(移植後30日間,毎日1回)経口投与とし,腫瘍細胞は腹腔内(腹水腫瘍)または皮下投与(固型腫瘍)とした.RJの投与量は,0(対照),10,100,1000mg/kgとし,以下の結果を得た.1)生存期間の短い(8~9日)L1210,P388を用いた実験では,RJによる抗腫瘍効果は認められなかった.2)生存期間が16日のSarcoma-180腹水腫瘍を用いた治療実験では,9.3~19.3%の生存期間の延長を認めた.生存期間が22.1日のEhrlich腹水腫瘍を用いた治療実験では,RJ10mg/kgで20.4%,1000mg/kgで17.6%の生存期間の延長を認めたが,100mg/kgでは抗腫瘍効果は認められなかった.3)Ehrlich腹水腫瘍を用いた固型腫瘍の治療実験では,RJにより25.3~54.8%の腫瘍抑制率が認められ,また,予防・治療効果の実験では38.3~47.5%の抑制効果が認められた.sarcoma-180腫瘍細胞を用いた固型腫瘍の治療実験では,RJにより45・1~59・7%の腫瘍抑制効果が認められ,また,予防・治療実験では49.1~56.1%の抑制効果が認められた.これらの結果により,RJは急性の腫瘍に対しては効果が発現しにくいが,増殖速度の遅い腫瘍には抗腫瘍効果を発現することが推測された.

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