日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
実験的造精機能障害ラットの作製ならびにその障害におよぼすMecobalaminの効果
尾崎 覚大川 功加藤 義則田島 鉄弥木村 正一折笠 精一
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 91 巻 4 号 p. 197-207

詳細
抄録

ラットを用いて,造精機能障害の病態モデルを確立し,この造精機能障害に対するmecobalamin(CH3-B12)の効果を検討した.1)ラットにdoxorubicin(ADR)を3週間,5週間および7週間皮下投与し,造精機能を評価した.その結果,ADRを0.1mg/kg以上,5週間投与した場合,精巣および精巣上体の重量は減少した.また,精巣組織像において,精細管の萎縮および精細胞分化の阻害が認められた.さらに,精巣上体尾部の精子数と精子運動率の減少および精子奇形率の増加が認められた.これらの造精機能障害の程度は,ADRの用量と投与期間に依存していた.2)上記の基礎的な検討から,著者らは0.25mg/kgのADRを5週間投与し実験的造精機能障害を作製し,CH3-B12を5週間および10週間腹腔内投与し,CH3-B12の効果を評価した.その結果,CH3-B12を1,000μg/kg 10週間投与した場合,精細管直径および精子数が有意に増大および増加し,また,精子運動率が増加する傾向を認めた.以上のことから,CH3-B12は造精機能障害を改善する作用をもち,乏精子症治療薬の可能性が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top