日本薬理学雑誌
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三環系抗うつ薬反復投与による心筋各種受容体ならびに心筋筋小胞体 Ca2+ 結合能に対する影響
坂本 博彦横山 信治西本 敬史河野 茂勝大幡 勝也村井 和征辰巳 煕
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1989 年 94 巻 4 号 p. 229-236

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抄録
三環系抗うつ薬反復投与時の心筋各種受容体並びに心筋筋小胞体 Ca2+ 結合能に対する影響を検討し,あわせて,薬物動態学的データとの関連について考察を加えた.1)quinupramine は imipramine に比べて中枢並びに心筋ムスカリン様受容体に高い親和性を示した.2)quinupramine 反復投与により心筋ムスカリン様受容体の Bmax 値の増加が認められたが,β-アドレナリン受容体の変化は認められなかった.一方,imipramine 処置群ではいずれの受容体においても変化は認められなかった.3)imipramine 処置ラットにおいて,isoproterenol 刺激による心筋 ornithine decarboxylase 活性上昇の程度は対照群に比べて有意に低かったが,quinupramine,amitriptyline 及び mianserin では,差は認められなかった,4)quinupramine 及び imipramine 反復投与により,心筋筋小胞体への Ca2+ の結合量(Bmax)が減少した.5)〔14C〕quinupramine 経口投与後(2mg/kg)の心臓内濃度は,血漿中および脳内濃度よりも高かった.6)〔14C〕quinupramine 反復投与により心臓内濃度は,単回投与時の2.4倍に上昇した.以上の成績より,三環系抗うつ薬は,心臓組織に高濃度に分布し,神経化学的作用のみならず心筋筋小胞体の Ca2+ 結合機能にも著明な作用を示すことが明らかとなった.
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