抄録
記憶に対する薬物効果をラットを用いて検索する目的で,遅延弁別反応実験を行った.実験にはY迷路と2レパーオペラント実験箱を用い,オペラント実験箱では遅延時間中にレバーが引き込む場合と引き込まない場合の2種として計3種の事態を用いた.これらの事態で左右のうち一方に弁別刺激であるラソプを点灯し,消灯後一定の遅延時間経過後に左右の選択反応を観察し,先の点灯側への反応を正選択とした.scopolamine0.015~0.06mg/kg,s.c.はY迷路事態では遅延0秒,両オペラント実験箱事態では遅延0.1および4秒での正選択率を溶媒投与時よりも減少させた.nicotine0.06~1mg/kg,s.c.はY迷路事態では遅延0~4秒,レバーの引き込む事態では遅延4秒,引き込まない事態では遅延0.1秒での正選択率を減少させた.遅延弁別反応実験には,正選択率におよぼす薬物効果を遅延時間との関連で把握できる特色があり,記憶に対する薬物効果の検索上有用であると考えられた.