日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
95 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 福原 武彦
    1990 年 95 巻 6 号 p. 279-293
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    The present physiological and neuropharmacological views and the essentials of the experimental results on the anatomical localization, functional and neuronal organization of the central respiratory mechanisms, classically expressed as the respiratory centers, in the brain stem were reviewed and discussed. The brain stem neural mechanism for central regulation of breathing is regarded as a complex neuronal mechanism consisting of several functional subsystems subserving different functions. One of its functions is the generation of respiratory rhythm. The subsystem for respiratory rhythm-generating mechanisms is located in the medullary reticular formation outside the DRG and VRG regions, which are thought to be premotor neuron pools. Rhythmic activity orginating in the medulla is dominant in terms of the spontaneity over other rhythmic activity in the pontine and spinal cord mechanisms. Evidences for heterogeneity of the functional properties of brain stem respiratory neurons have been demonstrated. Neuronal mechanisms involving respiratory neurons identified as members of the primary respiratory neuron population or neuronal networks consisting of different types of respiratory neurons located in the lateral region of the bulbar reticular formation may play important roles in the generation of respiratory rhythms. These aspects contribute to the understanding of the neurophysiological basis, providing important prerequisites for further neuropharmacological studies on neurotransmission within the neuronal network of the central respiratory mechanisms.
  • 戸田 昇, 岡村 富夫
    1990 年 95 巻 6 号 p. 295-308
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    The great discovery by Furchgott of the relaxing factor released from the endothelium (EDRF) awakened us to the necessity to reevaluate the functional importance of endothelial cells that have been chemically or physically stimulated. EDRF was first demonstrated to be released by acetylcholine, substance P, bradykinin and calcium ionophore A23187; thereafter, many substances have been found to release EDRF. This factor is quite unstable, is not produced by cyclooxygenase, and is an activator of soluble guanylate cyclase that synthesizes cyclic GMP; its action is suppressed by antioxidants via the superoxide anions produced, potentiated by superoxide dismutase and abolished by methylene blue and oxyhemoglobin. Recently, the role of lipoxygenase products in the production of EDRF was evaluated with new 5-lipoxygenase inhibitors without antioxidant activity. During the last couple of years, the actions and chemical properties of EDRF were verified to be quite similar to those of nitric oxide (NO); therefore, the hypothesis of “EDRF=NO” is widely being accepted. NO is produced from L-arginine via catalysis by an enzyme that is activated by Ca2+. The enzyme activity is inhibited by L-monomethyl arginine and other L-arginine analogs. Chemical and physical stimulations increase intracellular Ca2+ in endothelial cells that seems to be associated with K+-channel opening and hyperpolarization. Current interests are directed to the possible roles of NO in the regulation of nerve function. There are evidences suggesting that NO modulates adrenergic nerve function in blood vessels and some brain cell functions regulated by cellular cyclic GMP. Particularly, NO may be a transmitter substance in non-adrenergic, non-cholinergic vasodilator nerves innervating the cerebral arteries. Future investigations will determine the physiological roles of EDRF or NO and its relationships to pathophysiology of vascular dysfunctions, such as vasospasm and those related to hypertension, diabetes, aging, etc., and the extended roles of NO in nerve function, inflammation, immune reactions, etc. would be clarified more extensively by accelerated progress in this field of research.
  • 広中 直行, 宮田 久嗣, 高田 孝二, 安東 潔
    1990 年 95 巻 6 号 p. 309-318
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    記憶に対する薬物効果をラットを用いて検索する目的で,遅延弁別反応実験を行った.実験にはY迷路と2レパーオペラント実験箱を用い,オペラント実験箱では遅延時間中にレバーが引き込む場合と引き込まない場合の2種として計3種の事態を用いた.これらの事態で左右のうち一方に弁別刺激であるラソプを点灯し,消灯後一定の遅延時間経過後に左右の選択反応を観察し,先の点灯側への反応を正選択とした.scopolamine0.015~0.06mg/kg,s.c.はY迷路事態では遅延0秒,両オペラント実験箱事態では遅延0.1および4秒での正選択率を溶媒投与時よりも減少させた.nicotine0.06~1mg/kg,s.c.はY迷路事態では遅延0~4秒,レバーの引き込む事態では遅延4秒,引き込まない事態では遅延0.1秒での正選択率を減少させた.遅延弁別反応実験には,正選択率におよぼす薬物効果を遅延時間との関連で把握できる特色があり,記憶に対する薬物効果の検索上有用であると考えられた.
  • 阿部 祐司, 成松 明博, 戸部 昭広
    1990 年 95 巻 6 号 p. 319-325
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    心選択性β-遮断薬betaxololの虚血心筋に対する作用を,麻酔開胸犬の冠動脈を閉塞した時の心筋エネルギー代謝および糖代謝変化を指標に検討した.左冠動脈前下行枝を10および30分間閉塞し,虚血心筋を作製した.betaxolol(0.1または0.3mglkg)を冠動脈閉塞の5分前に静注した.betaxololは,心拍数,左心室内圧一次微分値,冠血流量および血圧を有意に低下させた.冠動脈閉塞により,心筋のクレアチン燐酸,ATP,総アデニソヌクレオチド,エネルギーチャージポテンシャルは有意に低下した.虚血10分後において,betaxololは,これらの心筋エネルギー代謝変化を有意に抑制した.また,0.3mg/kg投与群では,虚血30分後も,総アデニンヌクレオチド量は有意に高値であった.虚血心筋では,グリコーゲンの低下および乳酸の蓄積が認められ,糖代謝はボスホフルクトキナーゼの段階で阻害された.betaxololは,虚血10分後におけるこれらの糖代謝変化を抑制した.以上の結果から,betaxololは,冠動脈閉塞による心筋代謝の嫌気的状態への移行を遅らせ,虚血による心筋障害を軽減することが示唆された.
  • 秋田 浩, 橋本 みゆき, 山田 光彦, 木内 祐二, 小口 勝司, 安原 一
    1990 年 95 巻 6 号 p. 327-333
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    ラットにmethamphetamine(MAP)を隔日漸増投与(MAP群としてMAP2.5,5,7.5mg/kg×3,10mg/kg×2隔日投与,1回量順次増量,対照群として同様の方法で生食投与)後,2日目,4週間目のMAP再投与時にみられる逆耐性現象を確認し,その休薬期における音刺激に関連した行動上の特性と,脳内アミン濃度の変動について検討した.最終投与後2日目,1週間目,2週間目,4週間目において,MAP群では,対照群でみられた音刺激時の運動量の増加や音刺激後の運動量の減少がほとんどみられず,音刺激に対する低反応性を示した.また脳内では,最終投与後2日目に今回測定した4部位(大脳皮質,中脳+視床,視床下部,線条体)すぺてにおいて5-HT系の総合成量の低下がみられ,最終投与後4週間目にも大脳皮質,中脳+視床ではその変化が持続していた.dopamine,norepinephrine系では著明な変化はみられなかった.大脳皮質,中脳+視床でみられたserotonin系に選択的な総合成量の持続的低下と行動上みられた音刺激に対する低反応性の持続は,何らかの関連性があると考えられた.
  • 嘉久志 寿人, 四家 勉, 早崎 洋子, 松原 尚志, 内田 清久, 本間 義春, 川角 浩, 竹内 良夫
    1990 年 95 巻 6 号 p. 335-346
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    cefaclor〔3-chloro-7-D-(2-phenyl-glycinamido)3-cephem-4-carboxylic acid;CCL〕のモルモット多血小板血漿および洗浄血小板のPAF,ADP,collagen,エンドトキシンおよびトロンピン凝集に対する作用をin vitroで検討した.PAFは凝集惹起最少有効濃度以下でADPおよびエンドトキシン凝集の増強および最大凝集時間に達するまでの時間の延長を示し,collagen凝集に対してはcollagen添加から凝集開始までの時間(lagtime)を短縮させ凝集速度を促進させた.CCLは血小板のPAF,ADP,トロンピン凝集およびPAFのADP凝集の増強作用を抑制し,collagen凝集に対してはlagtimeの延長および凝集速度を低下させたが,エソドトキシン凝集に対しては影響を与えなかった.CCLの作用はlatamoxef(LMOX)とほぼ同程度であった.CCLやLMOXはPAF,ADPおよびトロソビン刺激による細胞内Ca2+の増加に対しては影響を与えなかった.従って,CCLの血小板凝集阻害作用は,細胞内Ca2+の増加を抑制せずに血小板凝集を阻害するので,フィプリノーゲンと膜糖蛋白質IIb/IIIa複合体の結合の阻害によるものではないかと推測される.
  • 別所 秀樹, 鈴木 じゅん子, 成松 明博, 戸部 昭広
    1990 年 95 巻 6 号 p. 347-354
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    心選択性のβ遮断薬であるbetaxololの実験高血圧ラットにおける抗高血圧作用とその機序について,atenolol及びpropranololと比較検討した.抗高血圧既発症の高血圧自然発症ラット(SHR)においてbetaxololは単回経口投与で1mg/kgから用量依存性の降圧と心拍数減少を示した.10mg/kgによる降圧は24時間持続していた.atenololもほぼ同等の抗高血圧作用を示したが,propranololは10mg/kgでわずかな降圧を示すにとどまった。betaxololは腎性高血圧ラット,DOCA一食塩高血圧ラット,正常血圧ラットにおいても降圧を生じたが,その程度はSHRにおける降圧と比較すると弱かった.SHRにおける3週間の連続投与実験ではbetaxololの降圧作用に耐性は認められなかった.pithedratにおいて脊髄神経の電気刺激による昇圧を,betaxololは1mg/kg,i.v.から用量に依存して抑制した.また,norepinephrine(NE)による昇圧に対してもbetaxololは抑制を示した・atenololも神経刺激昇圧をlmglkgから用量に依存して抑制したが,NE昇圧に対しては抑制を示さなかった・SHRの脳室内にbetaxololを投与しても降圧作用は認められなかった.SHRの血漿レニン活性はbetaxolol10mg/kg,p.o.で低下したが,6時間後には元のレベルに回復した.以上の結果より,betaxololは実験高血圧ラットにおいて単回および連続経口投与で抗高血圧作用を示すことが判明した.その作用機序としては,血管拡張作用による総末梢血管抵抗の低下が示唆された.また,作用機序の一部には交感神経シナプス前膜β受容体遮断作用の関与も推定された.
  • 別所 秀樹, 鈴木 じゅん子, 喜多田 好, 成松 明博, 戸部 昭広
    1990 年 95 巻 6 号 p. 355-360
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    心選択性のβ遮断薬であるbetaxololの腎性高血圧犬における抗高血圧作用とその機序について,atenolofおよびpropranololと比較検討した.一腎性Grollman型高血圧犬において,betaxololは単回経口投与で1mg/kgから用量に依存した降圧と心拍数減少を示した.これらの変化は24時間後には元の値に回復した.atenololは血圧には全く影響を与えなかったが,心拍数に対してはbetaxololよりもむしろ強い抑制を示した.propranololでは血圧,心拍数ともに有意な変化はみられなかった.連続投与実験においてはbetaxololの降圧作用は増強され,耐性は認められなかった.麻酔犬の後肢血流量は,betaxololの動脈内投与により用量依存性に増加し,その活性はpapaverineの約1/3であった.これに対しatenololは血流を全く変化させなかった.betaxololによる後肢血流増加はpropranololの静脈内投与によって影響を受けなかった.以上の結果よりbetaxololは腎性高血圧犬において単回および連続経口投与で抗高血圧作用を示すことが判明した.その作用機序として内因性交感神経刺激作用によらない,末梢血管抵抗の減少が示唆された.
  • 鈴木 伸二郎, 作本 貞良, 宮崎 秀人, 種池 哲朗
    1990 年 95 巻 6 号 p. 361-368
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    イヌにおける徐放性テオフィリン(TP)製剤の体内動態に対する食餌の影響について検討した.6頭の雑種犬(体重10~15kg)に,2種の徐放性TP製剤(Theolong錠とTheodur錠:100mg/head)をそれぞれ食餌あるいは絶食後に経口投与した後,血漿と尿中TPおよびその尿中排泄物を高速液クロで測定した.Theolong錠およびTheodur錠を両条件下で投与して得られた血中TP濃度の経過は2-コンパートメントモデルで解析できた.食餌犬におけるTheolong錠のCmax(4.047±0.298,μg/ml),Auc(71.347±0.941μg・hr/ml)およびF(0.536±0.047)は,いずれも絶食犬の約40~50%であり,吸収パラメーターの有意な低下が認められた.一方,Theodur錠の吸収過程をふくむ全てのパラメーターは,両条件間で有意な差は認められなかった.食餌犬でえられたTheolong錠による尿排泄速度の増加率とその最大効果(1.849±0.626ml/kg/hr)は,絶食犬(5.59±1.31ml/kg/hr)に比べて緩徐で,有意に減少した.Theolong錠を投与したイヌの尿中には,TP,3-メチルキサンチンおよび1,3-ジメチル尿酸のピークが認められ,この尿中排泄物の種類は両条件下で同様であった.しかし,食餌犬では,TPとその代謝物の36時間目までの累積尿中総排泄率(38.96%)は約59%減少,全身クリアラソス(0.7581/hr)に対する肝クリアランス(0.4361/hr)の割合は約72%に減少したが,腎クリアランス(0.3221/hr)の割合は,約2.5倍に増加した.これらの成績は,イヌでは徐放性TP製剤の吸収過程が食餌により影響されるもの(Theolong錠)とされないもの(Theodur錠)とがあることを示している.
feedback
Top