抄録
ラットの胃に酢酸潰瘍およびclamping-cortisone潰瘍を作成し,新規抗潰瘍剤azuletil sodiumの治癒促進作用につき検討した.またclamping-cortisone潰瘍Yこついては感染を防止するためspecific pathogen free(SPF)動物を用いSPF施設においても検討し,コンベンショナルで行った場合と比較した.その結果,以下の事が明らかになった.1)酢酸潰瘍においてazuletil sodiumは90mg/kg/day以上の経口投与で有意に潰瘍面積を縮小した.2)酢酸潰瘍においてさらに3段階の分類(潰瘍期,治癒過程期,癩痕期)により評価すると,azuletil sodiumはより低用量の30mg/kg/day以上で有意な治癒促進作用を示した.3)clamping-cortisone潰瘍においてコンベンショナル施設で行うと,azuletil sodiumは100mg/kg/dayの投与で治癒指数および粘膜再生指数を増加させたが有意な作用ではなかった.しかし組織学的所見として,azuletil sodiumおよびsucralfateの投与により有意な血管新生作用が認あられた.一方,azuletil sodiumはSPF施設で行ったclamping-cortisone潰瘍において30mg/kg/dayの経口投与で有意な治癒促進作用を示し,100mg/kg/day以上で粘膜再生指数を有意に増加した.4)clamping-cortisone潰瘍をSPF施設で実施するとコンベンショナル施設でみられたような感染例は全くみられなかった.さらに癒着の程度も小さくなり,自然治癒の促進がみられた.また治癒係数等の各指数の標準誤差も小さくなった.以上の結果から,新規抗潰瘍剤azuletil sodiumは30mg/kg/day以上の経口投与で酢酸潰瘍あるいはclamping-cortisone潰瘍の治癒を有意に促進させることが判明した.