日本薬理学雑誌
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Lisurideの中枢セロトニン5-HT1A作用と抗不安作用
赤井 哲夫高橋 昌哉仲田 行恵大西 玲子生駒 幸弘山口 基徳
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1991 年 97 巻 4 号 p. 209-220

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抄録
麦角アルカロイド誘導体lisurideの中枢セロトニン5-HT1A受容体への作用をラット及びウサギを用いて,生化学的,行動薬理学的,脳波学的に検討した.また,ラットのwater-lickコンフリクト試験を用いてhsurideの抗コンフリクト作用を検討した.lisurideはラットの縫線核,海馬,皮質,扁桃体,視床下部の5-HT1A受容体への〔3H〕8-OH-DPATの結合を濃度依存的に強く阻害した.海馬5-HT1A受容体への〔3H〕8-OH-DPAT結合のhsurideによる阻害の強さは,5-HTとほぼ同等であり(Ki=0.5nM),5-HT作動薬5-MeO-DMT(Ki=2.1nM),並びに,他の麦角アルカロイド誘導体bromocriptineやpergoHde(Ki=3.0nM)よりも強かった.Hsuride(0.1~0.5mg/kg,i.p.)は8-OH-DPAT(0.25~2.5mg/kg,i.p.)同様,用量依存的にラットに5-HT症候群を誘発した.Hsurideは5-HT症候群誘発と共に自発運動量の増加を引き起こしたが,8-OH-DPATは自発運動量に影響しなかった.音刺激覚醒時,ウサギ脳波は海馬において4-7Hz(θ波)の高振幅の周期波(RSA)を,皮質において低振幅速波を呈する.hsuride(0.01~0.03mg/kg,i.v.)は8-OH-DPAT(0.1mg/kg,i.v.)及びdiazepam(1.0mg/kg,i.v.)同様海馬脳波RSAを用量依存的に減少させた.また,皮質脳波に対して,lisurideは8-OH-DPAT同様低振幅速波成分を増加させ,diazepamは高振幅徐波成分を増加させた.さらに,lisurideは不安惹起物質FG7142投与(1.0mg/kg,i.v.)により増強されたRSAを8-OH-DPATやdiazepam同様,抑制した.water-lickコソフリクト試験において,lisuride(0.05及び0.1mg/kg,i.p.)はdiazzepam(2.5mg/kg,i.p.)同様被ショック数を増加させ,抗コンフリクト作用を示した,以上の結果は,lisurideが脳内5-HT1A受容体に対して,強力なアゴニストとして作用すること,及び,抗不安薬様の薬理効果を発揮しうることを示唆している.
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