日本薬理学雑誌
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ラットのNicotine弁別効果における側坐核の関与についての検討
宮田 久嗣安東 潔柳田 知司
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1991 年 98 巻 5 号 p. 389-397

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抄録

SD系雄性ラットを用い,nicotineの弁別効果発現にかかわる脳内部位の検索を行った.オペラント実験箱の2つのレバーのうち一方をニコチンレバ一,他方を生理食塩水レバーと定めて,餌強化を用いて皮下投与によるnicotine0.5mg/kgと生理食塩水1ml/kgの弁別をラットに確立した.その後,側脳室または側坐核に両側性にガイド管を植え込み,各種薬物の脳内投与による般化テストを行った.この結果,皮下投与によるnicotineO.5mg/kgの弁別効果は,側脳室投与によるnicotine100μgおよび120μgに般化した.このことから,nicotineの弁別効果は同薬の中枢作用によって発現されることが示された.しかし,nicotineの弁別効果は,側脳室投与によるacetylcholine0.5~10μg(pllysostigmine0.03mg/kg皮下投与後),および側坐核投与によるmetllamphetamine5~40μg,あるいはdopamine1~10μg(nialamide100mg/kg腹腔内投与後)には般化しなかった.すなわち,nicotineの弁別効果はこれらの薬物の弁別効果とは異なっていることが示された.一方,nicotineの弁別効果は,側坐核投与によるnicotine100μgにほぼ般化し,また,ニコチン性受容体の拮抗薬であるmecamylamine180μgの側坐核投与によって減弱した.これらのことから,nicotineの弁別効果には側坐核のニコチン性受容体が関与している可能性が示唆された.しかし,同部位のnicotineおよびmecamylamineに対する感受性が低い点で,側坐核がnicotineの弁別効果発現における主作用部位であるとは必ずしもいえない結果が得られ,今後さらに他の部位等の検討が必要であると考えられる.

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