日本薬理学雑誌
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植物成分の抗腎炎効果に関する研究(5)黄柏成分フェロデンドリンの抗GBM腎炎に対する効果とその作用機序
服部 智久山田 論子古田 和也永松 正伊藤 幹雄鈴木 良雄
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1992 年 99 巻 6 号 p. 391-399

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抄録

黄柏成分7エロデンドリン(OB-5)のオリジナルならびに半月体タイプ抗糸球体(GBM)腎炎に対する効果について検討した.オリジナルタイプ抗GBM腎炎ラットの尿中タンパク排泄量に対してOB-5は50mg/kg/day,i.p.投与で有意に抑制した.また,OB-5は,腎炎に伴う血清コレステロールならびにクレアチニン含量の上昇を著明に抑制し,糸球体における富核や癒着などの病理組織を改善した.一方,半月体タイプ抗GBM腎炎に対しては腎炎発症とほぼ同時に投与した場合,OB-5の50mg/kg/day,i.p.において尿中タンパク排泄量の有意な抑制が認められた.また,腎炎で上昇した血清クレアチニン,尿素窒素ならびにコレステロール含量は,OB-5の50mg/kg/day,i.p.によって有意に抑制された.半月体,癒着ならびにフィブリノイド壊死などの糸球体の病理組織学的な変化に対してOB-5は,用量依存的に抑制した.また,腎炎発症後20日目から投与した場合でも血清ならびに病理組織変化を改善した.糸球体における白血球サブセット数に対するOB-5の効果をサイクロスポリンAと比較検討した結果,OB-5の50mg/kg/day,i.p.投与により白血球共通抗原,ED-1,CD8陽性細胞数の糸球体における数の減少が認められた.この作用はサイクロスポリンAの20mg/k:g/day,p.o.とほぼ同程度の効果であることが認められた.以上の結果からOB-5は,抗GBM抗体腎炎モデルに対して有効であり,作用機序のひとつとして糸球体における細胞性免疫機構に対する抑制効果が示唆された.

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