抄録
MRIなどの利用により3次元声道の音響解析が近年進められている.有限要素法は複雑な3次元声道を高い周波数域まで解析するのに適した手法であるが,解析モデルの作成に多大な労力が必要であり,大量の観測データを対象とするのは困難となっている.従来から用いられている1次元線路(音響管)モデルは構成が簡単であるが,声道の微細構造に起因する音響特性を表現することができず,4kHz程度までが適用限界となっている.本報告では1次元線路モデルを拡張し,エバネッセントモードを含む高次モードを取り入れることで,矩形音響管の縦続接続により構成された音響管内部の3次元音場を解析する方法を示す.声道断面の変形をモデルの管軸位置の幾何学的な摂動と考えた場合にどのように音響特性が変動するかという点について考察し,このような微小な形状変化が低域におけるホルマント周波数の低下や高域における伝達特性の変動として現れることを示す.