日本顎関節学会雑誌
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矯正歯科治療後に生じた開咬に再度矯正歯科治療を行った顎関節に骨変形のみられた一例
谷本 幸太郎丹根 由起丹根 一夫
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2009 年 21 巻 1 号 p. 5-10

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抄録
顎関節の変形を伴う不正咬合患者について,矯正歯科治療前後の顎関節病態の長期経過を検討した。患者は開咬を主訴として来院した初診時年齢20歳5か月の女性で,Angle II級開咬,および骨格的前後関係はANB角5.9°の上顎前突で,オーバージェット7.0mm,オーバーバイト0mmであった。また,顎関節は両側とも下顎頭の変形を呈していた。Angle II級開咬ならびに両側顎関節の変形と診断された。スタビライゼーション型スプリントを3か月使用して顎関節病態の経過をみた後,マルチブラケット装置を用いた矯正歯科治療により,不正咬合の改善を行った。2年3か月後,安定した緊密な咬合状態が獲得されたため,保定に移行した。治療期間中に関節円板および下顎頭の状態に変化が認められたが,顎関節症状は認められなかった。保定開始5年後,顎関節症状はなく,咬合状態も安定していたため保定を終了した。骨形態変化などの顎関節病態の進行は認められなかった。術前の顎関節症の診断と,適切な治療計画に加えて,治療後の継続的な経過観察が重要であると考えられた。
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© 2009 一般社団法人 日本顎関節学会
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