日本顎関節学会雑誌
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安静時ヒト咬筋血流動態に対する直線偏光近赤外線照射の影響
瀧口 悟前川 賢治小野 剛窪木 拓男
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2009 年 21 巻 2 号 p. 105-109

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抄録

慢性筋痛の病態に筋組織内血流動態の失調が関与している可能性が報告されていることから,組織血流の改善効果があるとされる直線偏光近赤外線照射後の咬筋組織内血流動態を,健常被験者を対象として検討した。被験者は本学職員,学生のうち,全身的に健康で,慢性筋痛を認めない男性10名(25.6±1.8歳)である。血流動態の測定にはレーザー組織血液酸素モニター(オメガモニターBOM-L1 TRW, オメガウェーブ社:東京)を用いた。本装置センサーを右側咬筋中央相当部皮膚に貼付し,組織酸素化血液量,組織脱酸素化血液量,組織全血液量,組織血液酸素飽和度を測定した。実際の測定は,測定装置装着後に一定期間の安静を指示した後,ベースラインとして3分間連続記録し,直線偏光近赤外線(スーパーライザー,東京医研:東京)を10分間右側咬筋に照射(出力80%,4秒照射・1秒休止サイクル),終了後に再度3分間連続測定した。また,同様のタイムコースで照射を行わない擬似条件を照射条件に先駆けて記録した。その結果,照射前ベースラインの平均値は,両条件において差はみられなかったが,照射後の平均組織酸素化血液量,平均組織血液酸素飽和度は擬似照射後と比較して有意に増加した(p<0.05)。以上より,咬筋組織に対する直線偏光近赤外線照射は,組織内動脈血量ならびに酸素飽和度を増大させることが明らかとなった。

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© 2009 一般社団法人 日本顎関節学会
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