抄録
顎関節強直症に対して,一般的に顎関節授動術による治療が行われているが,術後再発の可能性が高く,関節円板切除後に皮膚弁,側頭筋膜弁,耳介軟骨などの生体組織を中間挿入物として用いることで術後の再発を防ぐ試みがなされている。今回われわれは,顎関節強直症に対し顎関節授動術および側頭筋膜弁による再建を行い,術後長期観察を行った1例について報告する。
患者は54歳の女性で,開口障害を主訴に当院を受診した。臨床所見および画像所見より左側下顎頭部腫瘍,左側顎関節強直症と診断した。開口訓練を行ったが開口域の改善は認めず,外科的な治療が必要であると判断し,左側下顎頭切除術および側頭筋膜弁による再建を行った。術後に開口域は30 mmまで改善した。大きな顔貌の変化や顔面神経麻痺は認めなかった。術後1年半でのCT検査では再発を認めなかった。現在,術後5年を経過しているが,開口域は30 mmを維持し,機能的にも審美的にも良好である。