日本顎関節学会雑誌
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新たに改訂された日本顎関節学会による顎関節症の病態分類(2013年)と診断基準
矢谷 博文
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2015 年 27 巻 2 号 p. 76-86

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抄録

わが国では,1986年に顎関節研究会によって「顎関節疾患および顎関節症の分類・表」が提示された。その後,日本顎関節学会から1996年に「顎関節疾患および顎関節症の分類(改訂案)および顎関節に関する用語(改訂案)」が,さらに1998年に「顎関節症における各症型の診断基準」が発表された。2001年には「顎関節症診療に関するガイドライン」が発行された。これらはわが国に広く定着し,顎関節症の臨床面および研究面での進歩に大きく貢献した。一方米国では,標準的な問診票,臨床的診察・検査法,および各症型の診断基準を含むResearch Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(RDC/TMD)が作成され,1992年に公表された。その後もこのRDC/TMDを改良する努力が続けられ,2014年初頭に信頼性と基準関連妥当性の確認されたDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)が公表された。このように科学的,臨床疫学的手法に則って着実に進められてきたRDC/TMDからDC/TMDへの進化の過程と比較して,本学会には全く改訂の動きがなかったが,2013年から2014年にかけてようやく「顎関節症の概念(2013年)」「顎関節症と鑑別を要する疾患あるいは障害(2014年)」「顎関節・咀嚼筋の疾患あるいは障害(2014年)」「顎関節症の病態分類(2013年)」および「顎関節症の診断基準(2014年)」が改訂された。本論文においては,改めてこれらに対する解説を加えた。改訂された顎関節症の病態分類とその診断基準が,わが国における顎関節症およびその類似疾患の診断および治療の質の向上に寄与することが期待される。

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© 2015 一般社団法人 日本顎関節学会
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