日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
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27 巻, 2 号
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依頼論文
  • 古谷野 潔
    2015 年 27 巻 2 号 p. 75
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
  • 矢谷 博文
    2015 年 27 巻 2 号 p. 76-86
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    わが国では,1986年に顎関節研究会によって「顎関節疾患および顎関節症の分類・表」が提示された。その後,日本顎関節学会から1996年に「顎関節疾患および顎関節症の分類(改訂案)および顎関節に関する用語(改訂案)」が,さらに1998年に「顎関節症における各症型の診断基準」が発表された。2001年には「顎関節症診療に関するガイドライン」が発行された。これらはわが国に広く定着し,顎関節症の臨床面および研究面での進歩に大きく貢献した。一方米国では,標準的な問診票,臨床的診察・検査法,および各症型の診断基準を含むResearch Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(RDC/TMD)が作成され,1992年に公表された。その後もこのRDC/TMDを改良する努力が続けられ,2014年初頭に信頼性と基準関連妥当性の確認されたDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)が公表された。このように科学的,臨床疫学的手法に則って着実に進められてきたRDC/TMDからDC/TMDへの進化の過程と比較して,本学会には全く改訂の動きがなかったが,2013年から2014年にかけてようやく「顎関節症の概念(2013年)」「顎関節症と鑑別を要する疾患あるいは障害(2014年)」「顎関節・咀嚼筋の疾患あるいは障害(2014年)」「顎関節症の病態分類(2013年)」および「顎関節症の診断基準(2014年)」が改訂された。本論文においては,改めてこれらに対する解説を加えた。改訂された顎関節症の病態分類とその診断基準が,わが国における顎関節症およびその類似疾患の診断および治療の質の向上に寄与することが期待される。
  • 有馬 太郎
    2015 年 27 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    2014年2月,研究用のみならず臨床用の診断プロトコルとしてDC/TMD(Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders)が発表された。これはRDC/TMDプロトコルの信頼性が向上するよう,エキスパートパネルら(members of the International RDC/TMD Consortium Network of the International Association for Dental Research(IADR), members of the Orofacial Pain Special Interest Group(SIG)of the International Association for the Study of Pain(IASP), and members from other professional societies)により大きく変更されたものであり,実際の妥当性(診断法の敏感度・特異度)の検証もなされていることが特徴である。結果DC/TMDプロトコルは最も一般的な疼痛関連顎関節症と顎関節内障における妥当な検査法と診断基準を含んでおり,臨床・研究どちらにもただちに応用するにふさわしい疼痛の生物心理社会的モデル(人間の心や体の病気は身体的要因,心の問題,生活環境や周囲との関係性のすべてがかかわっていると考えるモデル)に基づいた顎関節症患者の評価(検査)の集大成として今後の研究・臨床で利用されると思われる。本稿は,このDC/TMD診断プロトコル(原則,検査手法,診断方法など)をマスターするまでの過程について,小生が実際に学んだ手順と,DC/TMDの今後の展望について,RDC/TMDエキスパートパネルらのご意見やDC/TMD発表までの経緯,内情を交えながら紹介する。
原著
  • 中川 聡, 高原 楠旻, 角倉 可奈子, 今井 英樹, 小村 健
    2015 年 27 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    関節円板復位療法は,急性非復位性関節円板前方転位症例に対して早期に大幅な開口域の増大と疼痛の改善が得られる可能性があるが,関節円板が復位しない場合があることや疼痛を伴う治療も含まれるため,その適応に考慮が必要である。本研究の目的は,関節円板復位療法の適応を明らかにすることである。ロック期間が3か月未満の非復位性関節円板前方転位症例を対象とし,関節円板復位療法を行って関節円板復位症例と非復位症例に分類した。これら2群の初診時の臨床所見,MRI所見を比較した結果,ロジスティック回帰分析にてロック期間,関節円板前方転位の程度,Joint effusionの有無に有意差を認めた。予測因子の組み合わせモデルでは,関節円板前方転位が軽度の症例,および関節円板前方転位が中等度であってもロック期間が3週間未満かつJoint effusion有りの症例では80%以上の奏効率が得られた。このような症例に対して,初期治療として関節円板復位療法が適応となりえることが示唆された。
症例報告
  • 高橋 啓, 松本 尚之, 四井 資隆
    2015 年 27 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    上顎前歯の舌側傾斜,顎関節痛および開口障害を主訴として来院,治療後に下顎頭のリモデリングを認めたアングルⅡ級2類症例を経験したので報告する。患者は大阪歯科大学附属病院を受診した初診時18歳8か月の女性で,左右顎関節に間欠性ロックを伴う相反性clicking,左右顎関節運動痛および圧痛などを認めた。治療前のMR像で右顎関節の非復位性,左顎関節の復位性関節円板前方転位,顎関節規格断層X線写真で下顎頭の変形および後方位がみられ,顎関節症Ⅲ型およびⅣ型を伴う骨格性上顎前突症と診断した。下顎の機能的な後右方偏位を防ぐために咬合挙上型スプリントを併用しながら上顎をレベリングした後,上顎に下顎前方整位型スプリントを装着して下顎をレベリングした。下顎頭の下方位および下顎歯列正中の右方偏位改善のため,high pull headgear, palatal barおよび顎間ゴムを装着し,下顎左右第三大臼歯を抜歯して動的矯正治療を終えた。治療後,上顎前歯の舌側傾斜,過蓋咬合およびオトガイ部の後退感が改善し良好な側貌が得られた。顎関節および咀嚼筋の運動痛は解消したが,左右顎関節の圧痛およびclicking,左側咬筋および内側翼突筋の圧痛は残存した。開口域の増加,安静空隙量の減少,顎運動パターンの改善を認め,左右関節円板と下顎頭の位置が改善した。顎関節規格断層X線写真で下顎頭に二重外形線が認められ,下顎頭のリモデリングを認めた。下顎が非生理的に後上方位を呈している骨格性上顎前突症患者では,下顎位を前下方に維持しながら矯正治療することで,顎関節症とともに骨格性上顎前突症が改善されると考えられる。
  • 渡辺 昌広, 赤峯 勇哲, 藤井 智子, 森 悠衣, 後藤 基宏, 大西 祐一, 覚道 健治
    2015 年 27 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    患者が意図的に身体症状を捏造する虚偽性障害であるミュンヒハウゼン症候群は,歯科口腔外科領域では非常にまれな疾患である。今回われわれは顎関節開放剝離授動術後に感染を認め,創部デブリードマン手術,抗菌薬点滴,局所洗浄を行うも創部治癒遅延を認めた患者に対して,ミュンヒハウゼン症候群を疑い厳重な創部保護を施行し,治癒にいたった症例を経験した。今回の症例から,歯科口腔外科領域にもミュンヒハウゼン症候群という疾患が存在することを,われわれの共通認識とする必要のあることが確認された。術後に原因不明の創部治癒遅延を認めた際には,医療従事者が早期にこの病態を認識し,患者の精神状態の悪化にも注意しながら創部保護に努め,また,病的行動に対して混乱せず適切に対処することが重要であると考えられた。
  • 野上 以織, 勝田 秀行, 船登 雅彦, 代田 達夫
    2015 年 27 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/09
    ジャーナル フリー
    上顎智歯周囲炎に起因した慢性翼突筋炎が原因と考えられた重度開口障害の1例を経験したので,その概要を報告する。患者は69歳の男性で,約5年前より開口障害を自覚するも放置していた。2年前より某総合病院歯科口腔外科で顎関節強直症と診断され,開口訓練が行われていたが,症状の改善が得られず当科へ紹介され受診となった。初診時,最大開口量は5 mm,強制開口量は6 mmと重度の開口障害を認めた。X線写真では下顎頭の形態は正常であったが,CTおよびMRIで内側翼突筋および外側翼突筋に炎症性変化を認めた。以上の所見から,左側上顎智歯周囲炎の波及により生じた慢性翼突筋炎により開口障害が生じていると診断した。左側上顎埋伏智歯を抜歯し,抗菌薬で消炎を図るとともに開口訓練を続けたところ,最大開口域は35 mmまで回復した。現在,術後1年6か月経過しているが,開口域は維持しており経過良好である。今回の症例から,急性炎症を伴わない重度の開口障害に対しては,顎関節周囲組織以外に頭蓋底から頸部をも含めた精査が必要と考えられる。
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