2018 年 30 巻 3 号 p. 237-242
顎関節のエックス線を用いた画像検査には,パノラマエックス線撮影法やパノラマ4分割撮影法がある。これらのエックス線撮影法を組み合わせることで2方向からの画像が得られ,おおよその顎関節の形態を診断することが可能であるが,これらの撮影法で得られる情報は二次元(平面)であり,三次元(立体)である顎関節を正確に評価するためには必要に応じて医科用CTや歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いた診断が求められる。
医科用CTやCBCTは空間分解能が高く,変形性顎関節症や関節リウマチ,顎関節強直症,骨折などの診断に最も適している。特にCBCTは硬組織に対して非常に高い分解能を示し,微細な骨梁構造や解剖学的構造を明瞭に描出することが可能である。MRIが普及するまでは造影剤を用いた顎関節造影法が関節円板の転位や形態を診断する唯一の方法であったが,いまでもMRIでは判別しづらい関節円板の穿孔や癒着などの診断に用いられている。
CBCTは形態学的診断以外にも,顎関節症の外科的治療法のパンピングマニピュレーションや関節腔洗浄療法における穿刺部位や穿刺角度,穿刺深度を決定するために術中で利用されている。
本稿では,顎関節部のCBCT撮影の注意点とその撮影手技について記載した。また,その解剖学的内容(造影像を含む)と,代表例として変形性顎関節症,骨折,顎関節強直症,滑膜性骨軟骨腫症の4例についても記載した。先生方の日常臨床に役立てば幸いである。