日本顎関節学会雑誌
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運動器疼痛の治療法としての運動療法
矢吹 省司
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2018 年 30 巻 3 号 p. 243-248

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抄録

腰痛と肩こりは男女ともに有する頻度が高く,国民を困らせている2大症状である。腰痛と肩こりの病態の共通点は,頻度の多い症状である,椎間板変性だけが症状の原因ではない,ストレスなどの心理社会的要因が深く関わっている,そして,症状は局所であっても脳も含めた全身疾患として捉える必要がある,という点である。腰痛と肩こりの治療の共通点は,保存療法が基本である,運動の種類とは関係なく運動療法を行うこと,それ自体が有効な治療である,そして,全身運動は最も勧められる運動療法である,という点である。

運動により痛みが軽減する(exercise-induced hypoalgesia:EIH)メカニズムには内因性疼痛調節系が関与していることが報告されている。現時点で最も有力なEIHメカニズムは,カンナビノイドが関連しているというものである。カンナビノイドはマリファナ類似作用を示し,EIHを引き起こす。

慢性痛にはさまざまな要因が関与しているため,病態の解析や治療には多職種が関わる集学的診療が推奨される。われわれが行っている集学的治療の中心となるのは,運動療法と心理療法である。私が考える慢性痛に対する認知行動療法のポイントは,痛み0だけの生活を目指さない,元々の痛みの原因を追究するより“今”の症状をどうするか,そして「痛みがあってもなんとかなる」という自信が大事,の3点である。

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© 2018 一般社団法人 日本顎関節学会
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