2018 年 30 巻 3 号 p. 249-254
後期高齢者において顎関節脱臼が繰り返し発症すると,摂食・嚥下機能が大きく障害され,体力が低下するフレイルに陥る可能性がある。しかしながら,現時点では要介護高齢者における顎関節脱臼の発症頻度や状態などが不明であることから,特別養護老人ホームにおける顎関節脱臼の実態調査を実施した。
公益社団法人全国福祉施設協議会の了解を得て,無作為に特別養護老人ホームを抽出し(東京都:176施設中20施設,名古屋市:42施設中10施設,岡山市:39施設中10施設,徳島市:10施設中10施設),顎関節脱臼に関するアンケート調査を実施した。アンケート項目は,施設名,回答者職種および氏名,回答日,過去1年間における利用者総数(通所者,入所者),往診歯科医あるいは歯科の存在,過去1年間における顎関節脱臼患者総数(通所者,入所者),顎関節脱臼の整復が困難だった症例数,および他施設に顎関節脱臼の治療依頼をした症例数とした。
アンケートに回答した施設数は50施設中39施設(78%)であった。特別養護老人ホームにおける過去1年間の顎関節脱臼患者数は通所者が0人/1,653人(0%),施設入所者が12人/3,240人(0.4%)であった。顎関節脱臼の整復困難症例は5人/12人(41.7%)であり,脱臼に対する治療を依頼した症例は6人/12人(50%)であった。
特別養護老人ホーム入所者における顎関節脱臼患者の割合は高くはないが,一定数が存在することが理解できた。また,顎関節脱臼患者の整復が困難であったものは高い割合を示した。