2019 年 31 巻 2 号 p. 93-99
顎関節前方脱臼の整復は,ヒポクラテス法などの非観血的な徒手整復法が第一選択であるが,陳旧症例になると上関節腔のパンピング療法併用の徒手的整復法,顎間牽引法,単鈍鈎や骨把持鉗子を用いた観血的な下顎骨牽引,下顎頭切除術,関節隆起切除術,上関節腔線維性癒着の剝離術などが用いられている。また,習慣性脱臼における脱臼防止方法には,開口訓練,弾性包帯やチンキャップなどの顎外装置,頰骨突起を用いた関節隆起形成法,チタンミニプレートや自家骨ブロック移植による障害形成法,関節円板縫合固定法,口腔粘膜・側頭筋腱縫縮法,自己血注入療法,関節隆起切除術などが行われている。局所や全身病態に応じてこれらの治療法を選択する必要があるが,病態や治療法選択の科学的根拠はいまだ乏しいのが現状である。