日本顎関節学会雑誌
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<臨床に有用な基礎知識>痛みと開口障害を伴わない顎関節(雑)音に対する患者説明
島田 淳
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2021 年 33 巻 1 号 p. 3-8

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抄録

顎関節(雑)音は,顎関節症の主要症候の一つである。しかし症状が,顎関節(雑)音のみの場合には,日常生活に支障がでることはほとんどなく,自然経過は良好な場合が多いとされ,治療による顎関節(雑)音の改善,消失は困難であり,再発することも少なくない。痛みや開口障害を伴わない顎関節(雑)音を生ずる病態は,主に顎関節円板障害と変形性顎関節症であり,そのほとんどに関節円板転位が関与している。しかし顎関節(雑)音の病態はさまざまであるため,診察・検査により病態を診断する必要がある。「痛みと開口障害を伴わない顎関節(雑)音」の多くは自然経過が良好である。治療を行ってもその効果は不確実で,副作用として咬合が変化する可能性があり,咬合治療や矯正が必要となる場合がある。しかし症状が悪化しないためには,病態に対する理解とセルフケアが必要である。歯科医師は診察・検査で得られた患者の病態を基に経過観察を含めた治療に対する合理的な選択肢とそれらの利益やリスクに関するエビデンス,さらには患者の価値観を共有し,患者にとって最善の治療方針を患者と一緒に決定することを目的とした説明を行うことが求められる。

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© 2021 一般社団法人 日本顎関節学会
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