日本顎関節学会雑誌
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症例報告
アプライアンス療法が奏効した若年者の変形性顎関節症に対して長期経過観察を行った1例
栗田 武小出 馨水橋 史渡會 侑子浅沼 直樹
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2021 年 33 巻 2 号 p. 51-57

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抄録

若年者の変形性顎関節症にアプライアンス療法を施行し,長期的な経過観察を行ったところ,臨床的・画像診断学的に良好な結果が得られたので,その概要を報告する。患者は14歳女性で,開口時における左側顎関節部の痛みを主訴として来院した。初診時の臨床所見では,側頭筋・咬筋の圧痛に加え,機能時痛と開口制限に繋がるクレピタス音を伴う左側顎関節痛を認めた。CT検査では,両側下顎頭に皮質骨の菲薄化と粗造化を認め,加えて左側下顎頭には,矮小変形と平坦化も認められた。顎関節MRI検査では,左側下顎頭に皮質骨の一部に断裂像と,復位を伴わない関節円板前方転位を認め,右側顎関節には復位を伴う顎関節円板前方転位を認めた。以上よりDC/TMDの診断決定樹に従い,顎関節症Ⅰ,Ⅱ,Ⅲa,ⅢbならびにⅣ型と診断した。治療としては,上顎型スタビリゼーションアプライアンスを用いて咀嚼筋群と顎関節への過度な負担の軽減を図るとともに,理学療法と悪習癖に対する指導を行った。これらの治療により,咀嚼筋群と顎関節の安静と咬合の安定化が得られた。加療後4か月で術前に認められた顎関節症の症状は消退し,開口量も正常レベルまで改善した。その後6か月ごとの経過観察を行ってきたが,その間は夜間睡眠時のブラキシズムへの対応として,必要に応じたアプライアンスの装用を指示した。その結果,治療開始から4年経過した時点まで,顎関節症症状の再燃はなかった。また,同時点でのCTとMRI検査により再評価を行った結果,下顎頭部のリモデリングが認められ,変形性顎関節症を示唆する所見は消退しており,経過良好と考えられた。

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