2023 年 35 巻 2 号 p. 70-76
顎関節症の基本治療は,病態説明とセルフケア指導に始まり,保存的治療として理学・運動療法,薬物療法,アプライアンス療法などを主体とした可逆的な治療が行われるべきである。この保存療法の3本の柱の1つであるアプライアンス療法について,2017年に発表されたメタ分析によると,短期的な痛みの軽減に効果があり,特に筋痛に効果があることが報告されており,われわれはそのような患者に自信をもってこのアプライアンス療法を推奨することができる。
一方で,補綴学的な視点からこのオクルーザルアプライアンスを改めて顧みると,エビデンスはまだ十分に確立されていないものの,われわれは多岐にわたってこのアプライアンスを補綴治療に応用してきた現状がある。特に,咬合挙上時や,変形性顎関節症に伴う後天的な前歯部開咬が生じている症例などは,アプライアンスなしで治療を前に進めることは困難といえる。
本稿では,1)アプライアンス療法で効果が期待できる顎関節症状,2)アプライアンスの顎関節症状別の応用方法,3)顎関節の形態変化に伴う後天的な前歯部開咬症例への応用の3点に絞って,補綴学的視点からアプライアンス療法を改めて深堀りした。