日本顎関節学会雑誌
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血管鋳型走査電顕法による成熟家兎顎関節の微細血管構築
第1報 閉口時について
高木 律男大橋 靖吉田 重光小林 茂夫
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1989 年 1 巻 1 号 p. 102-109

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抄録

成熟家兎の閉口時における顎関節円板周囲の血管分布を血管鋳型走査電顕法で観察した。
顎関節には豊富な血管供給が認められ, 特に円板後方部において血管の分布密度が高いが, 関節円板に相当する領域は, いわゆる無血管領域として観察された。
円板後組織と関節円板との移行部には上・下2層の滑膜下血管網が認められ, 形態的に明かな差を示していた。すなわち上関節腔の滑膜下血管網は, 帽子状の形態で, その内層に比較的太い血管が観察され, これらの分枝が表層で一層の粗な毛細血管網を形成していた。これに対し, 下関節腔の滑膜下血管網は一様の太さよりなる非常に密で平坦な毛細血管網で構成されている。毛細血管の走行は, 上下ともに蛇行を示すものの, 下関節腔において, より強い蛇行が認められた。
また, これら上下関節腔の滑膜下血管網と無血管領域との境界部には, 単純なヘアーピン状の毛細血管ループが認められたが, ループの形成は, 上関節腔においてより明瞭であった。
このような, 形態的な差は単に上・下関節腔の運動範囲の差によるもののみではなく, 滑液産生, 栄養供給といった機能的差異の存在を示唆していることも考えられた。

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