日本顎関節学会雑誌
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顎関節雑音と下顎運動と関連性
横山 尚弘澤田 明山口 泰彦丸山 道朗木村 朋義内山 洋一
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1989 年 1 巻 1 号 p. 110-121

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抄録

顎関節雑音は, 顎関節症の症状の1つとして高頻度に認められ, その発現時期・大きさなどを分析することは, 病態の把握, 治癒過程の判定などにとって重要である。
著者らは, 従来のシロナソ・アナライジング・システムに改良を加え, 下顎運動と顎関節雑音を同時記録することにより, 下顎運動の変化と顎関節雑音の関連を詳細に検討してきた。
本研究は, 顎関節雑音を一症状とする顎関節症患者の顎関節内部の状態の推測や病態の診断, 治療効果の判定を行なうことと, 下顎運動とそれに伴って発現する顎関節雑音との関連性を明らかにする目的で, 開閉口運動時の速度を幾つかに規定した場合と, 咬みしめを行なった後の顎関節雑音の変化について検討を行なった。その結果は以下のようであった。
1. 習慣性開閉口運動の速度を変化させると, 顎関節雑音の発現位置はほとんどの症例において有意に変化した。特に速度が遅くなると閉口時の顎関節雑音の発現位置は, 閉口末期に近づく傾向を示した。
2. 顎関節雑音の振幅は, 関節雑音非発生側で咬みしめを行なった後の開口時に著明に増大した。
3. 以上の結果から, 顎関節雑音の発現位置の変化に開閉口速度が関与し, さらに咬みしめが雑音の振幅を変化させることが示唆された。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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