日本顎関節学会雑誌
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不正咬合者における顎関節症状の発現 -顎関節症の成立機転に関する一考察-
不島 健持秋本 進高本 建雄亀井 照明佐藤 貞雄鈴木 祥井
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1989 年 1 巻 1 号 p. 40-50

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抄録

顎関節症の発現に対する咬合異常の関わりを明らかにする目的で, 神奈川歯科大学矯正科に来院した不正咬合者149人に対し顎関節症状に関する疫学的調査を行なった。
不正咬合者全調査対象における有症状者率は33.6%であった。これを男女別にみると, 男性が27.8% (54人中), 女性が36.8% (95人中) であり, 顎関節症の発現は男性より女性に多かった。
有症状者の顎関節症状の発現は, 顎関節雑音が最も多く76.0%であり, 次いで疼痛が68.0%, 顎運動障害が38.0%であった。
有症状者率の年齢的推移から, 顎関節症状は8歳頃より顕在化してくることがわかり, 有症状者率は15歳から18歳頃に一時期低下し, 19歳以降に高い値を示した。このような変化には, 混合歯列期における乳歯から永久歯への交換現象, あるいは第三大臼歯の萌出現象といった咬合系の変化が関連していると思われる。
不正咬合別の有症状者率は, 4前歯反対咬合, 側切歯反対咬合という対称性の不正を呈するものでは低い一方, 臼歯部反対咬合, 下顎側方偏位で高かった。このことは, 顎関節症の発現に下顎頭の側方への偏位が関わっていることを示唆しているものと考えられる。

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