日本顎関節学会雑誌
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MRIにて非復位性関節円板前方転位を認めた若年発症顎関節症の保存療法による臨床経過
松田 秀司妹尾 弘子金月 章吉村 安郎
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1999 年 11 巻 1 号 p. 36-41

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抄録

1992年12月より1996年12月までに当科を受診し, MRIにて非復位性関節円板前方転位と診断した18歳以下の若年発症顎関節症患者30例について臨床経過を検討した。性別は, 男性6例, 女性24例で女性に多く, 年齢は12-18歳, 平均年齢15.4歳であった。初診時の主訴では, 疼痛13例, 開口障害14例, 関節雑音3例であった。治療は, 全症例にスプリント療法を行い, 5例では薬物療法を, またスプリント療法が奏効しなかった1例では上関節腔洗浄療法を併用した。30例中受診期間が6か月未満の症例群は10例あり, 6か月以上1年未満の症例群は9例, 1年以上3年未満の症例群は11例であった。主訴別にみた平均受診期間は, 疼痛群では8.8か月, 開口障害群では10.2か月であった。また, MR画像上, 非復位性関節円板前方転位であったにも拘わらず開口量が40mm以上の症例は10例あり, 非復位性関節円板前方転位症例でも疼痛はあるものの重度の開口障害は呈しない症例もあると考えられた。主訴の開口障害群では14例中12例が保存療法のみで症状の改善をみており, 若年者においては積極的な外科療法を必ずしも必要としないと考えられた。また, 今回の対象30例中28例に治療終了または中断後より平均1年9か月経過した段階でアンケート調査を行った結果, 疼痛残存例3例, 関節雑音残存例9例であり, 開口障害を訴える症例はなかった。

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