日本顎関節学会雑誌
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頭蓋下顎障害における下顎頭偏位と顎関節領域の疼痛との関係
高草木 章小林 義典志賀 博
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2001 年 13 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

下顎頭偏位が顎関節構造に影響を及ぼし, 顎関節痛を発現させるか否か, また外側翼突筋痛と関係するか否かを明らかにする目的で, TMD患者78名の顎関節部側方位X線規格写真で評価した下顎頭偏位の程度, 方向性と顎関節領域の触診による圧痛レベルとの関係を定量的に分析した。その結果, 1. 下顎頭は, 片側で後上方へ偏位している様相を示した。2. 左右側ともに, 下顎頭偏位の程度が大きくなるに従って, 顎関節外側部と外耳孔前壁の圧痛レベルは, 高くなる傾向が認められた。この傾向は, 左側顎関節外側部では, 下顎頭の前後的偏位の左右側差が大きくなるに従って, また外耳孔前壁では, 下顎頭の1側の後方偏位が大きくなるに従って, 著明になる傾向が認められた。3. 顎関節外側部と外耳孔前壁とをあわせた圧痛スコアは, 両側ともに下顎頭偏位の程度が大きくなるに従って, 高くなる傾向, また下顎頭の前後的偏位の左右側差が大きくなるに従って, 左側で高くなる傾向が認められた。4. 両側ともに, 下顎頭偏位の程度, 方向性と外側翼突筋の圧痛スコアとの間には, いかなる関係も認められなかった。以上のことから, 下顎頭偏位は, 顎関節構造に影響を及ぼし, 顎関節痛を発現させるが, 外側翼突筋痛とは関係がないことが示唆された。

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