抄録
近年, MRIによる顎関節画像検査の有用性は確立されているが, 矯正治療中の患者においては, 矯正装置による磁性体の障害陰影 (以下メタルアーチファクトと略す) が出現するため, 矯正治療中に顎関節の検査が必要な場合であってもMRI検査が施行されることはきわめて少ない。本研究ではMRI装置によるSpin echo法のプロトン密度強調像にて, 1) 矯正装置のメタルアーチファクトの基礎的なファントーム実験, および2) 異なる使用コイルを用いた臨床例の顎関節MRI撮像より, 矯正装置を装着した状態で顎関節部の描出の可能性について検討し, 以下の結果を得た。
1. ファントーム実験よりすべての矯正装置およびワイヤーは, MR画像上に0.4~11.9cmの大きさでメタルアーチファクトを生じ, またDB-ceramic, NiTiではメタルアーチファクトの出現が少なかった。
2. 矯正治療患者の顎関節のMRI検査は, 使用している矯正装置の種類によって臨床的診査に耐えうる画像の撮像が可能であった。
矯正治療中にMRI検査を行う必要がある症例では, メタルアーチファクトの出現を避けるためバンド付メタルブラケットおよびチューブの使用, 特に臼歯部での使用を避け, 顎関節専用表面コイルを用いることが臨床において有効であると示唆された。