日本顎関節学会雑誌
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前方チェックバイト法ならびに6自由度顎運動測定器によって得られた矢状顆路傾斜度の比較
正常有歯顎者について
浅井 崇嗣小野 圭昭木村 紀彦小正 裕
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2002 年 14 巻 1 号 p. 7-15

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抄録
一般的に臨床では, 咬合器の矢状顆路傾斜度を測定する際, 前方チェックバイト法を応用して行うが, 本法により得られる矢状顆路傾斜度は不安定であるなどの問題点が指摘されている。そこで, 咬合器の顆路調節を簡便に, かつ正しく行うことを目的として, ナソヘキサグラフの応用の可否を明らかにするため, 正常有歯顎者を対象に, 前方チェックバイト法と, ナソヘキサグラフによって得られた矢状顆路傾斜度とを比較検討した。その結果, 1) 前方チェックバイト法で得られた矢状顆路傾斜度は, 咬合器のタイプによって差は認められなかった。2) ナソヘキサグラフによって得られた矢状顆路傾斜度のバラツキは, 顆頭点移動量の増加に伴い小さくなった。3) 2元配置分散分析の結果, 矢状顆路傾斜度は顆頭代表点によって差はなく, 被験運動によって有意な差が認められた。4) 前方チェックバイト法と, ナソヘキサグラフにより得られた矢状顆路傾斜度を比較したところ, コンダイラー型咬合器では, 臨床的顆頭点での前方運動時の矢状顆路傾斜度との間に, 有意な差が認められたが, 全運動軸点で得られた矢状顆路傾斜度は, 咬合器の様式, 被験運動の違いにかかわらず有意な差はみられなかった。
以上より, 有歯顎者の矢状顆路傾斜度の測定に際し, ナソヘキサグラフを用いることが有用であることが示された。また, 多数歯欠損や無歯顎患者の補綴治療にナソヘキサグラフを用いて開口時の矢状顆路傾斜度を測定することにより, 従来の前方チェックバイト法にみられる種々の問題に左右されることなく, 咬合器上に矢状顆路傾斜度を簡便に決定できる可能性が示唆された。
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© 一般社団法人日本顎関節学会
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