日本顎関節学会雑誌
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外側翼突筋下頭の筋電図を用いて関節鏡支援下での顎関節開放剥離授動術の術後評価を行った顎関節症の1例
森 悠衣後藤 基宏窪 寛仁覚道 健治岩脇 康人内田 愼爾井上 宏有家 巧
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2006 年 18 巻 1 号 p. 6-11

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抄録

われわれは顎関節開放剥離授動術を施行した顎関節症患者の外側翼突筋の筋電図を使って術後機能評価を行った。患者は44歳男性, 主訴は開口障害および左側顎関節疼痛で, MRI所見にて顎関節症IV型クローズドロック, 円板はstuck状態であった。試験的パンピングマニピュレーションを施行するも奏効せず顎関節二重造影CTを行った結果, 両側に著明な線維性癒着病変を認め, 顎関節開放剥離授動術が適応となった。筋電図所見では特に外側翼突筋下頭 (以下I-Lpt) を指標とした筋電図で特徴ある所見が得られた。術前のI-Lptは閉口時にも活動し, 開口筋である顎二腹筋後腹との協調性活動はみられなかったが, 術後ではI-Lptは開口筋と協調的に活動し閉口筋との相反性活動がみられた。顎運動所見では術前の切歯点運動軌跡は右側側方運動時に可動制限があったが, 術後は改善され前突・側方運動ともに移動量が増加した。下顎頭運動所見では術前両側下顎頭は主に蝶番運動を行っていたのに対して, 術後は開口時左側下顎頭の運動範囲は増加した。今回I-Lptを指標とした術前術後評価は非常に有用であることが判明した。

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