高齢者や脳血管障害を有する患者の習慣性顎関節脱臼に対しては, その対処に苦慮することが多い。今回, このような習慣性脱臼の患者4例に上関節腔に自己血を注入する治療を行ったので, その概要を報告する。1例目は, 脳梗塞のため左半身麻痺の74歳の男性で, 頻回にわたる顎関節脱臼を認めるようになったため, 関節腔内自己血注入ならびに関節包の縫縮を行った。2, 3例目は, いずれもくも膜下出血で入院中の50歳台の男性で習慣性脱臼を認めたため, 上関節腔内および関節包周囲への自己血注入を行った。4例目は, イレウスにて入院中に右側の習慣性脱臼を認めるようになった80歳の女性で, 右側の関節腔内および関節包周囲への自己血注入を行った。全例とも数日間の顎間固定またはチンキャップによる開口制限を行った。4例ともほぼ満足する治療結果が得られた。
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