日本顎関節学会雑誌
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三叉神経鞘腫摘出術後に生じた開口障害と下顎運動神経麻痺に対して理学療法が有効だった1例
小林 大輔村岡 渡池田 浩子臼田 慎中川 種昭和嶋 浩一
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2006 年 18 巻 2 号 p. 148-151

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抄録

三叉神経鞘腫摘出術後に生じた側頭筋の瘢痕拘縮による開口障害と右側下顎運動神経麻痺に対して, 理学療法により改善した1例を報告する。患者は34歳男性で, 平成17年7月に当院脳神経外科で三叉神経鞘腫にて開頭摘出術を行った。術直後より開口障害と右側下顎運動神経麻痺が生じ, 加療目的に平成17年11月1日に当科初診となった。初診時, 自力最大開口域11mmで開口時に下顎右側偏位を認めた。右側での咬みしめが不能であり, 右側臼歯部は離開していた。また, 右側三叉神経全枝領域に知覚鈍麻を認めた。治療は初診時より側頭筋の瘢痕拘縮改善のため手指による自己開口訓練を行った。開口訓練開始1か月後には, 最大開口域は21mmとなった。さらなる最大開口域の改善を目的に丹下式開口器を用いた開口訓練を行った。訓練開始4か月後には35mmまで改善した。同時に, 下顎運動神経麻痺による咬みしめ不能に対しては, 初診時より, 中空のゴムチューブをくいしばることによる理学療法を行った。理学療法開始4か月で, 日常生活に支障のない程度まで咬合力は回復した。

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