2008 年 20 巻 2 号 p. 139-150
目的: 硬い固形食品を咀嚼する場合, 食品自身によって咬合が挙上され, 平衡側での上下臼歯咬合関係が消失し, 作業側を支点とした平衡側に下顎骨が回転するような不安定な咬合が出現する。このような咬合状態において, 作業側下顎骨の位置や運動を安定させるための咬筋と外側翼突筋の役割を解析した。
方法: ウレタン麻酔下のウサギ大脳皮質咀嚼野電気刺激により咀嚼様運動を誘発し, 左咀嚼時の左右咬筋ならびに左側外側翼突筋筋電図と, 切歯点および左側 (作業側) 下顎頭の運動を同時記録した。咬合挙上は, 上顎左側臼歯部咬合面を覆う可撤式の装置を作製して行った。
結果: 咀嚼様運動時では, 作業側下顎頭の矢状面内運動路は, 咬合相で前下方へと動いた。それに対し片側咬合挙上を行うと, 咬合相で下顎頭が後下方に動く異常運動が半数で認められた。片側咬合挙上により異常運動が出現する群としない群では, 作業側と平衡側の咬筋活動量, および作業側外側翼突筋と作業側咬筋筋活動の時間間隔に違いがみられた。