日本顎関節学会雑誌
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日本人胎児下顎頭の成長に関するX線学的研究
特にオトガイ-頭頂規格撮影による
本田 和也川嶋 祥史島村 卓也大島 一夫池田 港丸橋 一夫木村 一之篠田 宏司西連寺 永康島田 和幸北川 正
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1991 年 3 巻 2 号 p. 243-253

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抄録

顎関節における研究は, 歯科医学領域において大変興味ある問題であり, その病態や解剖学的形態および成長について近年多くの報告がされている。従来における下顎頭成長の研究の多くは, その対象が幼小児から成人についてのものであり, 胎児期については森永, 井出, および本田の報告がみられるのみで極めて少ない。また, これらはすべて側貌像または側貌X線規格写真のみを使用した研究であり, オトガイ-頭頂方向から観察した胎児期の下顎頭の成長についての検討は殆どない。著者らは, 日本人下顎頭の成長がどのような経過を辿るか, 特に胎児期の成長の過程を明らかにすることを目的として, 胎児のオトガイ-頭頂X線規格写真を計測し若干の知見を得たので, ここに報告する。
研究材料は, 日本大学歯学部第一解剖学教室所蔵の胎齢5ヵ月から胎齢10ヵ月までの胎児計33体を使用した。撮影法は当教室の鳥海の方法に準じ, オトガイ-頭頂X線規格写真を撮影した。計測項目は, 鳥海, 沢田の方法に準じ以下の結果を得た。
胎児下顎頭の長径, 短径, 長径間距離, および面積は, 胎齢5ヵ月から胎齢9ヵ月において, 胎齢の増加に伴いおおむね直線的な成長がみられ, 左右差はなく, 胎齢9ヵ月以降に成長のスパートがみられた。また, 胎児下顎頭の長径問角度では, 胎齢5ヵ月から胎齢10ヵ月の胎児において約120°で, 胎齢の増加による変化は殆ど認められない。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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