日本顎関節学会雑誌
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若年顎関節症の歯列模型による分析
青木 一郎後藤 康之野村 岳嗣水谷 英樹田口 望上田 実金田 敏郎峰野 泰久桑原 未代子
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1991 年 3 巻 2 号 p. 236-242

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抄録

近年, 顎関節症患者の低年齢化が顕著であり, 当科での発症年齢が15歳以下の若年者症例を見ると, 明らかな増加傾向を認める。若年発症顎関節症は顎関節症分類III型が多く, 従って咬合および下顎運動の異常に起因する症例が多いと考えられる。そこでわれわれは1989年に受診した発症年齢15歳以下で歯冠補綴を受けていない女性の顎関節症患者25名について模型分析を行い, 同年代健常者と比較し報告した。
対象患者は発症平均年齢13.0歳, 当科受診平均年齢14.3歳であり, 歯齢IIIC-IVAであった。模型分析は1) 上下顎正中線の不一致の有無2) over bite, over jetの量3) Spee弯曲の程度4) 咬合の不正部位5) 歯列弓周長, 歯冠近遠心幅径の総和6) 歯列弓長・幅径7) 歯槽基底長・幅径8) discrepancyの有無9) 上下顎第1大臼歯近遠心的咬合関係について検討した。その結果, 疾患群では, over biteの量, Spee弯曲の程度, 咬合の不正部位, 上顎の歯槽基底長径に関して対照群と差が認められた。
これらの事から, 咬合完成期にあたる若年者症例における咬合の不調和は, 筋の緊張促進, 下顎の後退位, および異常な顎運動等を引き起こす事が考えられ, 顎関節症を発症する誘因となる事が疑われた。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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