抄録
外傷に起因した進行性開口障害の2症例に対して顎関節造影にて線維性顎関節強直症と診断し, 関節内線維性癒着組織と円板切除, 下顎頭形成を行ない, さらに術後開口練習を行ない良好な結果を得た。
第1症例 (45歳女性) は顔面外傷後, 次第に両顎関節状症が増悪し, 最大開口域は26mmとなり咀嚼障害をきたしたので右側顎関節では線維性癒着組織切除と円板切除を, 左側顎関節では線維性癒着組織の切除, 円板切除, 下顎頭形成を行なった。術後は積極的な開口練習を行ない, 術後4年の時点では最大開口域35mmに上昇し, 硬食物の摂取も可能となった。
第2症例 (41歳女性) では顔面打撲後, 次第に右顎関節疼痛と開口障害が増悪し, 受傷後約1年で最大開口域は24mmとなったので線維性癒着組織の切除, 円板切除, 下顎頭形成を行なった。術後1年には最大開口域は35mmとなり, 日常生活に支障は訴えなかった。
従って, 外傷後に顎関節痛や開口障害が進行する症例では, 関節腔内線維性癒着の進行が疑われるが, その診断には顎関節造影が有効であり, また, 関節内線維性癒着組織および円板切除で疼痛の軽減が得られても, 十分な開口域が得られない症例では術後の積極的開口訓練が重要であった。