日本顎関節学会雑誌
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下顎頭の肥大を伴った顎関節部に発生したSynovial osteo chondromatosisの1例
千葉 昌子伊藤 重人水野 博之横尾 恵美子扇内 秀樹下野 正基
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キーワード: 顎関節部, 下顎頭の肥大
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1992 年 4 巻 1 号 p. 73-79

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抄録

Synovial osteochondromatosisは, 滑膜が軟骨化生を起こす疾患であり, 肘, 膝, 股などの長管骨の骨端部に好発するが, 顎関節部において, その報告は少ない。今回, われわれは下顎頭の肥大を伴った本症例を経験したので報告する。
患者は66歳の男性で, 約31年前, 右側顎関節部に違和感発現するも放置。昭和48年, 症状増大のため某大学病院口腔外科受診し, 右側耳前部皮膚の胼胝切除術およびステロイド剤の局注を受けた。昭和55年, 再び症状発現するも放置。平成元年12月, 同部の圧迫感増大, 側頭筋, 耳前部の鈍痛発現を主訴に当科へ来院した。初診時の顔貌所見は, 右側顎関節部に骨様硬の腫脹を認め, 顔面非対称を呈していた。単純およびパノラマX線所見, CT所見, 顎関節二重造影断層所見より右側下顎頭の肥大, 下顎頭外側縁の境界不明瞭な不透過像, 関節腔の狭窄, 関節円板の穿孔を認めた。骨シンチグラムでは, 右側下顎頭部に集積像を認めた。右側下顎頭部腫瘍の臨床診断のもと平成2年4月 全身麻酔下にて右側下顎頭切除, 関節円板および腫瘍摘出術を施行した。
病理組織学的診断は, Synovial osteochondromatosisであった。術後1年7ヵ月経過, 再発なく経過良好である。

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