日本顎関節学会雑誌
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顎関節雑音に関する臨床的検討
円板整位下顎位の得られない関節雑音について
依田 哲也塚原 宏泰坂本 一郎谷口 亘阿部 正人依田 泰森田 伸三井 妹美小野 富昭榎本 昭二
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1996 年 8 巻 3 号 p. 554-565

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抄録

円板整位下顎位を有さない関節雑音の診断法および治療法を確立する目的で, これらの関節雑音に対して, その病態ならびに臨床的特徴を, 臨床症状および単一上下関節腔断層撮影 (矢状断方向, 前頭断方向) 等で検討した。
対象は1994年1月から12月まで当科を受診した顎関節症患者1254名のうち, 円板整位下顎位のない関節雑音を認め, 関節腔造影検査の施行に同意を得られた25名 (男性8名, 女性17名) である。
結果; 下顎頭に対する関節円板の位置から, 正常なもの, 内方転位, 開口時の後方転位, 咬合位のみの前方転位 (復位性円板前方転位), 咬合位開口時の前方転位 (非復位性円板前方転位), およびその複合型がみられた。円板位が正常の症例は, 関節結節と関節円板上面との間で雑音が発生する結節性雑音であり, 全例に関節腔内の帯状線維性癒着がみられた。開口時の後方転位症例では, 関節円板の変形, 関節腔内の帯状線維性癒着がみられた。復位性関節円板前方転位症例は, 典型的に円板整位下顎位を有しているはずであるが, それを有さない症例では, 腔内の線維性癒着, 関節円板のたわみ, 変形がみられた。非復位性円板前方転位症例では, 典型的には雑音は伴わないが, 雑音を伴う場合は, 40mm以上の開口が可能で, 音はクレピタス, 円板変形, 穿孔, 癒着, 下顎頭骨棘形成がみられた。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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