日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
Print ISSN : 0915-3004
ISSN-L : 0915-3004
慢性クローズド・ロック症例に対する顎関節パンピング・マニピュレーション法の応用
造影所見と治療効果との比較
樋田 京子由良 晋也穴沢 敏行佐藤 淳佐藤 千晴小林 隆井上 農夫男戸塚 靖則
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 9 巻 1 号 p. 130-138

詳細
抄録
慢性のクローズド・ロック症例に対するパンピング・マニピュレーション法を主体とした治療法の効果ならびに適応を明らかにする目的で, 31名36関節 (男性4名, 女性27名, 年齢16歳から69歳) を対象として, 各症例を関節造影所見からWilkesの顎関節内障の病期分類を参考にStageIII-Vに分類し, Stage別に本法の治療成績を検討した。さらに年齢, 性別, ロック期間と治療成績との関係についても検討を加えた。治療成績は本療法後3か月以内に無痛開口度が38mm以上となり, 顎関節ならびに周囲組織の疼痛が日常生活において支障とならない場合に有効と判定した。患者の性別, 年齢と治療成績の間には明らかな関連はみられなかった。また, ロック期間によらず, 本法は60%以上の有効率を示した。関節造影所見との関連では円板の穿孔のないStage IIIおよびStage IVの症例で64%, 穿孔を伴うより病態の進んだStage Vにおいては55%で, Stageの進行とともに治療効果は低下していた。以上より本法は慢性のクローズド・ロック症例に対しても症例に応じ行ってみる価値のある治療法であることが示唆された。
著者関連情報
© 一般社団法人日本顎関節学会
前の記事 次の記事
feedback
Top