日本顎関節学会雑誌
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顎関節内障患者における下顎頭位と関節円板前方転位および円板形態との関連性
軸位補正矢状断層X線写真とMR画像を用いた比較検討
杉山 拓紀小澤 奏末井 良和田口 明谷本 啓二丹根 一夫
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1997 年 9 巻 2 号 p. 439-449

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抄録
磁気共鳴 (MR) 画像検査と軸位補正矢状断層X線写真より顎関節内障と診断された患者の中から, 関節円板側方転位および変形性顎関節症を有する者を除外した32名, 50関節について, 下顎頭位と関節円板前方転位および円板形態との関連性について検討を行った。対象とした関節をMR画像所見に基づいて復位を伴う円板前方転位群 (17関節), 復位を伴わない円板前方転位群 (13関節) および, 円板転位の認められない群 (20関節) の3群に分類するとともに, 各群の円板形態の評価を行った。次いで, 軸位補正矢状断層X線写真上で前方部と後方部の関節隙を計測し, それぞれの距離ならびに前方関節隙と後方関節隙の比 (A/P比) に基づいて下顎頭位を評価した。
復位を伴う円板前方転位群では, 47%の関節において円板の変形が認められた。また, A/P比は1.24であり, 円板転位の認められない群に対して有意に大きかった。一方, 復位を伴わない円板前方転位群では, すべての関節に何らかの円板変形が見られた。また, A/P比は1.12であり, 円板転位の認められない群および復位を伴う円板前方転位群に対して有意な差が認められなかった。また, 円板転位の認められない群では, 円板の形態変化は5.0%に認められ, A/P比は1.07であった。
以上の結果より, 復位を伴う円板前方転位を有する顎関節における下顎頭位は, 後方位を呈し, 復位を伴わない円板前方転位を有する顎関節では, 円板変形が多く認められ, 下顎頭は中央に位置する傾向にあることが明らかになった。
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© 一般社団法人日本顎関節学会
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