抄録
0.3% MgCr2O4を含むFo-An-Di系は, Crを含まない系に比して,スピネル (sp) の初相域が拡大し,アノーサイト (an) の初相域が縮小する。 Crを含まない系に見られたfo (フォルステライト)+an+di (ディオプサイド)+液とfo+an+sp+液の2つのpiercing pointがなくなり,代りにfo+di+sp+液 (1279°C) とdi+an+sp+液が現われ,この点を通る2つのunivariant lineは反応点fo+an+di+sp+液 (1270°C±) で出合い,ここでスピネルが消失し, fo+an+di+液のunivariant lineが派生する。このように微量のCrの存在が珪酸塩系の相関係に大きな影響を与え, 0.3% MgCr2O4 (0.24% Cr2O3)を含むFo-An-Di系はもはや温度境界 (thermal divide) とはなり得ない。このことは,もし0.2%前後のCr2O3が存在すれば,低圧においても分別結晶作用によってアルカリ玄武岩マグマからソレアイト質マグマが生成されることを意味する。