岩鉱
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南部北上帯の奥火の土花崗岩体は先シルル紀基盤か?
足立 守鈴木 和博与語 節生吉田 鎮男
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1994 年 89 巻 1 号 p. 21-36

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抄録
南部北上帯の奥火の土花崗岩体を構成する優白質花崗岩6試料と石英質ペグマタイト2試料および不整合直下の風化花崗岩(residual arkose) 2試料に含まれるモナザイト・ゼノタイム・ジルコンのトリウムーウランー全鉛アイソクロン (CHIME) 年代を測定した.優白質花崗岩の大半は,高いK2O/Na2O比と低いCaO/(Na2O+K2O)比で特徴づけられ, 250-260 MaのCHIME年代をもつ。ゼノクリストと考えられる約400 Maのモナザイト・ゼノタイム・ジルコン粒子を含む花崗岩も存在する。優白質花崗岩を切る石英質ペグマタイトは240-250 MaのCHIME年代をもつ。風化花崗岩には約420Maおよび約250 Maのモナザイト・ゼノタイム・ジルコン粒子のほかに,約500~1000 Maの円磨ジルコン粒子も小量含まれる。250-260 MaのCHIME年代およびジルコンの成長累帯の特徴などから考えて,奥火の土花崗岩体の大部分は二畳紀末期に貫入固結したものであり,先シルル紀基盤である可能性は少ない。
CHIME年代,シルル系奥火の土層の層序,およびシルル系と奥火の土花崗岩体の不整合関係の全てが正しいとすると,不整合直上に存在する奥火の土層の基底泥質岩(あるいは基底泥質岩とその上位の溶結凝灰岩)は二畳系であり,それにシルル紀石灰岩を含む地層が衝上していると解釈される。
奥火の土花崗岩と同様な二畳紀末の花崗岩は,これまで石炭紀(あるいは先シルル紀)と-括されてきた模式地の氷上花崗岩体の-部にも存在する。これら二畳期末の花崗岩体は,南部北上帯に点在する薄衣礫岩中の二畳紀花崗岩礫の供給源の一つであったと推定される。
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© 日本鉱物科学会
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