2022 年 8 巻 3 号 p. 1-9
本稿では,1人あたり実質GDPと1人あたり砂糖消費量の関係について,多国間パネルデータ及び日本の時系列データを使用して分析を行った.世界的には生活習慣病予防から砂糖摂取量を抑制するため加糖飲料への課税などが議論されている.しかしながら,日本の砂糖消費量は制限が課されなくとも1980年代から低下に転じており,必ずしも世界の潮流にあてはまっていない.所得水準と砂糖消費量に関する世界的な傾向を把握することは,砂糖に関する人類の共通の嗜好を把握するための一つの基礎知識になろう.分析結果は以下3点のとおりである.第1に世界的な傾向は,砂糖消費量は所得増加に伴い漸増し,減少に転じるわけではない.第2に,1992年以降の先進国では必ずしも所得の増加に伴い砂糖消費量が増加を続ける傾向が変化しつつある可能性がある.第3に,日本の砂糖消費量は減少しているが,必ずしも所得に要因があるとはいえない.今後こうした研究が進展し,健康に適切な砂糖消費量の実現に貢献する議論が活発化することが期待される.