本稿では「教室で言葉はつなげられるか」との問いのもとに,学習者の自己表現とその協働構築を意図した教室言語活動実践の分析を行った。「つなげられなかった」過去の筆者自身の実践を分析対象に,一学習者の教室活動での自己表現過程を詳細に追跡した結果,学習者の言葉を断ち切っていたものとして①教室で教師が持つ話題選択権・発話順番割り当て権などの権力,②教室で教師が担う教室運営上の役割・責務,③教師・学習者双方の教室での自己表現の回避,があげられた。言葉をつなげることを意図していたはずの教師自身(私)が教室という制度的場にあって,言葉を断ち切る役割を果たしていた。最後に今後の方向性として,現在の制度的な場としての教室を再考し,言葉をつなげることのできる「教室」のあり方を考えていくことの必要性を指摘した。