2017 年 15 巻 p. 172-
近年日本語教育において,教室や教育機関以外で学ぶ学習者に焦点を当てた研究の必要性が述べられている(舘岡,2015;柳田,2015;など)。しかし,そのような研究や実践はまだ十分になされていない。本稿は,Facebook上のあるコミュニティで日本語を使用・学習している「新しい日本語学習者」(高橋,2014,2015)に焦点を当て,「新しい日本語学習者」がどのような背景を持ち,そしてコミュニティのメリットやデメリットに対して,どのように評価しているかを明らかにしようと試みたものである。調査の結果,回答者の多くがコミュニティに対して肯定的な評価をしており,その理由の中にはオンラインコミュニティ特有の利点も含まれていた。その一方で,学習者が現状のコミュニティに対してさらに求めていることも明らかとなった。これらの結果から,「新しい日本語学習者」に関する研究を進めていく意義について筆者の考えを述べる。