本稿は日本の大学におけるチューター学習活動に着目し,言語社会化の観点から考察したものである。約 15時間の学習活動の会話データをもとに,8組の留学生と日本人チューターの学習活動を観察し,特に言語使用や特定の行動に関する評価に着目した。結果として,まず,否定的な評価が肯定的な評価より多く使用されることが分かった。また,否定的な評価が行われた場面では,評価と理由説明,評価と反論などのターンと連鎖のデザインが観察される。一方,留学生は同意,質問や反論などの行動によって,チューターとともに学習活動を共同構築する場面が見られる。言語使用または言動に対する評価を通して,言語使用及び社会的慣習が伝えられることがわかった。本研究により,評価が Schieffelinと Ochsが述べた「言語使用への社会化」及び「言語使用を通した社会化」へ貢献し,日本社会における適切な言語使用及び言動を身につける学習の実践となっていることが示唆された。